[Vol.1833] 中国は内憂外患が保有増加を継続させる動機

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。70.93ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,726.45ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年01月限は18,295元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年12月限は537.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1704.65ドル(前日比2.95ドル拡大)、円建てで8,225円(前日比26円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月18日 18時01分時点 6番限)
13,084円/g
白金 4,859円/g
ゴム 394.1円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,000円/mmBtu(24年12月限 10月15日17時54分時点)

●NY金先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「中国は内憂外患が保有増加を継続させる動機」
前回は、「中央銀行の米ドル離れは長期視点で続くもよう」として、中央銀行を対象として行っているアンケート調査の結果を確認しました。

今回は、「中国は内憂外患が保有増加を継続させる動機」として、中国の内憂外患(2024年)を確認します。

最近実施したセミナーで、個人投資家のかたからたくさんの質問をいただきました。その中に、「中国の金(ゴールド)保有増加は、もう止まってしまったのでしょうか?」という質問がありました。確かに、質問をされた方のおっしゃるとおり、今年5月以降、少なくとも8月まで、中国は金(ゴールド)の保有高を増やしていません。

前回示した図「中央銀行による金(ゴールド)買い越し量の推移」で示したとおり、中央銀行全体として買いが比較的多い状態が続いているため、中国の件が、直ちに金(ゴールド)相場に下落圧力をかけることは考えにくいと筆者はみています。

また、中国は以下のように内憂外患(国内の心配なことと、国外の煩わしいことが同時に存在する状態)の状態にあります。前回述べたとおり、中央銀行はさまざまな理由で金(ゴールド)に注目していますが、内憂外患の状態もまた、金(ゴールド)を保有する大きな動機になり得ます。

中国の「内憂」については、不動産大手の不安、沿岸部の若者の失業率上昇、内陸部の自治体の債務増加、自国民の自国通貨への不信、経済統計の不振などが挙げられ、「外患」については、米国との貿易・技術競争、西側諸国との折衝、非西側諸国内の均衡維持などが挙げられます。

特に外患における、米国との各種競争や非西側諸国の均衡維持に関連して、「米国離れ」を示すデータがあります。2010年ごろ以降、中国は米国債の保有残高を減らし続けています。非西側の超大国である中国が、西側の超大国の米国の資産を減らす動きは、さながら、西側と非西側の分断深化を連想させます。

「2010年ごろ以降」は、中央銀行全体の金(ゴールド)の買い越しが始まったタイミングです。世界分断という大きな事象がある中で、十数年間続いている中国の米国離れの流れが急に止まることは考えにくいと、筆者は感じています。

世界分断深化の中で中国の米国離れは今後も続く、中国の外貨準備高における通貨選択において金(ゴールド)が重要視される状態は続く、今後、いずれかのタイミングで中国の金(ゴールド)保有高は再び増加に転じると筆者は考えています。

長期視点で国内外の金(ゴールド)価格は、急騰状態にあります。短中期視点のテーマである「有事ムード」「代替通貨」はまだしばらく、金(ゴールド)相場に上昇圧力をかけ続ける可能性があります。各種戦争が終わらない、米国の利下げが続くという意味で、です。

中長期・超長期視点のテーマである「中央銀行」「見えないジレンマ」もまだ当面、上昇圧力をかけ続ける可能性があります。終わらない世界分断をきっかけに、中央銀行の買いが続く、見えない不安を意識した投資家の買いが続くという意味で、です。

金(ゴールド)相場が大暴落するためには、これらのテーマが同時に強い下落圧力をかける必要がありますが、ここまでの数回で確認してきたとおり、そのような状態が(特に長期視点で)到来することは考えにくいでしょう。

日々の細かい上下をこなしながら、長期視点では上値を切り上げ続ける可能性があると筆者は考えています。今と状況が変わらなければ、年内に2,800ドル、来年に3,000ドルに到達する可能性があると、現時点で考えています。

図:中国の内憂外患(2024年)
図:中国の内憂外患(2024年)
出所:各種資料を基に筆者作成 イラストはPIXTA

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。