[Vol.1832] 中央銀行の米ドル離れは長期視点で続くもよう

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。70.53ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。2,692.70ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。25年01月限は17,740元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年12月限は531.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1685.2ドル(前日比3.50ドル縮小)、円建てで8,132円(前日比21円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月17日 18時06分時点 6番限)
12,943円/g
白金 4,811円/g
ゴム 383.7円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,000円/mmBtu(24年12月限 10月15日17時54分時点)

●NY金先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「中央銀行の米ドル離れは長期視点で続くもよう」
前回は、「中央銀行の買いによる長期の上昇圧力も継続」として、中央銀行による金(ゴールド)買い越し量の推移(2010年~)を確認しました。

今回は、「中央銀行の米ドル離れは長期視点で続くもよう」として、中央銀行を対象として行っているアンケート調査の結果を確認します。

中央銀行は自身の外貨準備高(対外的に何かあったときのために保有している資産)に占める各通貨の割合を、将来的にどのようにするつもりなのでしょうか。WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)が年に一度、中央銀行を対象として行っているアンケート調査の結果に、そのヒントがあります。

5年後、米ドル、ユーロ、人民元、金(ゴールド)の保有割合はどの程度になると思うか、という質問があり、その回答結果は、以下の通りでした。(ここでは米ドルと金(ゴールド)の結果を記載)

中央銀行全体で外貨準備高に占める割合が49%の「米ドル」について、多くの中央銀行が保有比率は低下すると回答しました(先進国と新興国合わせて62%が低下すると回答)。おととしの回答結果は42%、昨年は55%だったため、米ドルの保有比率が低下すると考える中央銀行の割合が上昇傾向にあることが分かります。

先進国だけで見ても、低下(43%)と大きく低下(13%)を合わせた56%が、米ドルの保有比率が低下すると回答しました。先進国においても、米ドル離れの思惑が浮上しつつあるといえます。新興国は大きく低下(13%)と低下(51%)を合わせた64%でした。

中央銀行全体で外貨準備高に占める割合が16%の「金(ゴールド)」について、多くが保有比率は上昇すると回答しました(先進国と新興国合わせて69%が上昇すると回答)。おととしの回答結果は46%、昨年は62%だったため、金(ゴールド)の保有比率が上昇すると考える中央銀行の割合が上昇傾向にあることが分かります。

先進国だけで見ても、上昇と回答した割合は半数超の57%に上りました。先進国においても、金(ゴールド)寄りの思惑が強まりつつあるといえます。新興国は上昇(71%)と大きく上昇(4%)を合わせた75%が、金(ゴールド)の保有比率が上昇すると回答しました。

全体的に見て、中央銀行の「米ドル離れ・金(ゴールド)寄り」の傾向が強まっているといえます。以前の「[Vol.1829] 分断深化継続で金(ゴールド)は高止まり」で述べたとおり、すでに世界は分断状態にあり、その分断を修復することは大変に難しい状態にあります。

今後も世界分断をきっかけとした戦争、非西側諸国の資源の出し渋り、高インフレが続く可能性があり、こうした世界情勢の流れを感じ取った中央銀行たちが、今後も金(ゴールド)の保有高を増やす可能性があります。

図:5年後、中央銀行の金(ゴールド)の保有比率はどうなると思いますか?(2024年)
図:5年後、中央銀行の金(ゴールド)の保有比率はどうなると思いますか?(2024年)
出所:WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)の資料を基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。