週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比3.92ドル安の71.10ドル、ブレント原油は3.67ドル安の74.84ドルとなった。

 前週末は前日に急伸した戻り売りの動きから軟調な推移となると、10日夜に行われたイスラエル安全保障閣僚会合においてイランへの攻撃内容を協議したものの内容はまとまらず、最終決定は未だなされていないと伝わったことが重しとなった。

 先週は中東の地政学リスクが後退したほか、需要減少懸念が高まる中で上値重い推移となった。週明けはOPECの月報において2024、25年の世界石油需要の伸び見通しが下方修正されたほか、中国の原油輸入が5カ月連続で減少したことが嫌気され軟調な推移となった。翌15日は米ワシントンポストが、イスラエルによる報復攻撃に関してイランの核や石油施設を標的にしない方針を米国に通知したと報じたことで中東の地政学リスクが後退したことが重しとなった。また、OPECに続きIEA月報においても石油需要見通しが下方修正されたことも嫌気された。翌16日も軟調な推移を引き継ぐと、石油需要減少への警戒感やドル高進行していることが重しとなり軟調な推移となった。直近の米経済指標の堅調さから米利下げ期待は後退している一方、欧州ではドイツを中心に景気先行き不透明感が警戒されている中でECBによる利下げ期待が高まっており、対ユーロでのドル高が強まっている。週末にかけてはEIA統計において原油在庫が予想に反して減少となったほか、製品在庫も予想以上に減少したことが支えとなり堅調な推移となった。一方で米小売売上高が予想を上回る内容となったことで米利下げ期待が後退したほか、ECBが利下げを決定したことから対ユーロでドル高進行したことは上値を抑える格好となった。

NY原油チャートみんかぶ
出所:みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート

 イスラエルがハマス最高指導者・シンワル氏を殺害し、さらに戦闘を続ける考えを示したほか、過度な警戒感は後退しているもののイランへの報復攻撃で石油供給が混乱する可能性があるとの懸念は引き続き支えとなっている。一方でOPECやIEAの月報で石油需要見通しが下方修正されるなど、需要減少への警戒感が重しとなっているほか、直近の米経済指標の堅調さから利下げ期待が後退し、ドル高進行していることは圧迫材料となりそうだ。足元ではイスラエルの報復攻撃の行方を注視する中で押し目は支えられつつも、石油需要減少への懸念からじり安推移する展開が想定されそうか。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。