[Vol.1855] 食品小売価格を動かす要因は需要ではない

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。69.27ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,644.30ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年01月限は17,645元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。25年01月限は528.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1663.1ドル(前日比11.45ドル拡大)、円建てで8,353円(前日比85円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月20日 12時08分時点 6番限)
13,214円/g
白金 4,861円/g
ゴム 362.9円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,252円/mmBtu(25年3月限 11月19日17時18分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「食品小売価格を動かす要因は需要ではない」
前回は、「食品の小売価格高は世界各地で起きている」として、国民一人当たりの食費と国内家計最終消費支出(2010年と2022年)を確認しました。

今回は、「食品小売価格を動かす要因は需要ではない」として、食品の小売価格が決まるまでの流れ(原材料が外国で生産されている場合)を確認します。

以下は、食品の小売価格が決まるまでの流れを示した資料です。川上には、農産物やエネルギーの生産者がいます。彼らが生産する生産物が食材となったり、それを輸送する際の燃料になったり、加工する際に用いられる電気を起こす源になったりします。

外国で流通する際に決定する国際価格、運賃や保険料を含み、為替の影響を受けた輸入価格、流通業者や加工業者の間で売買される際の卸売価格、そして消費者がスーパーマーケットやレストランなど直に食品を消費する際の小売価格が存在します。食品の小売価格は、末端の価格だと言えます。

末端の価格を動かすのは、その時の需要と供給の状態ですが、影響が大きいのは供給です。

世界屈指の輸入国であり消費国である日本で暮らしていると、小売価格を決めているのは需要だと思い込んでしまいがちですが、昨今、各種コーヒーショップで提供されているコーヒーやパンの小売価格や、スーパーマーケットで売られている食用油、各種お菓子の価格が上昇しているのは(価格を据え置き、量を減らす「ステルス値上げ」を含む)、需要が旺盛だからではありません。図に書いた輸入価格が上昇しているためです。

輸入価格は、先ほど述べたとおり国際価格に運賃や保険料を加味し、為替の影響を考慮した価格です。円安が進行したり、航路・空路などに支障が生じるなどして保険料が上がったりした場合も、輸入価格は上昇します。そして何より影響が大きいのが、国際価格の変動です。

国際市場の分析なくして、食品小売価格の動向やエンゲル係数の動向を考えることはできません(特に日本では)。

さらに言えば、食品小売価格を含む社会一般の多数の事象が川下であること、金融政策は物価対策、景気対策などの人為的な調整が川中であること、そしてこれらを網羅するように影響力を行使するのがコモディティ(国際商品)であることを、心にとめておくべきです。

図:食品の小売価格が決まるまでの流れ(原材料が外国で生産されている場合)
図:食品の小売価格が決まるまでの流れ(原材料が外国で生産されている場合)
主所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。