[Vol.1897] トランプ2.0は世界分断を深化させる

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。74.89ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,780.59ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年05月限は17,430元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。25年03月限は605.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1804.64ドル(前日比10.04ドル拡大)、円建てで9,213円(前日比1円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月24日 18時54分時点 6番限)
13,922円/g
白金 4,709円/g
ゴム 382.0円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,960円/mmBtu(25年4月限 12月19日17時25分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「トランプ2.0は世界分断を深化させる」
前回は、「米利下げ方針で金(ゴールド)相場上昇」として、FFレートと海外金(ゴールド)現物価格の推移を確認しました。

今回は、「トランプ2.0は世界分断を深化させる」として、2010年ごろ以降の世界分断発生とコモディティ(国際商品)価格上昇の背景を確認します。

トランプ2.0が始まることによって、急低下する可能性がある指数があります。V-Dem研究所(スウェーデン)が公表している米国の自由民主主義指数です。

法整備、裁判制度、言論の自由など、民主主義に関わる多数の情報をまとめて数値化したこの指数は0と1の間で決定し、0に接近すればするほど、その国が自由で民主的な度合いが低いことを、1に接近すればするほど自由で民主的な度合いが高いことを意味します。

東西冷戦のさなか、米国は旧ソ連や旧ソ連と考え方を同じくする国々と明確に異なる自由で民主的な姿勢を強めました。2001年に同時多発テロ発生をきっかけとした混乱によって一時的に低下したものの、その後は反発して0.85近辺に達し、米国が世界屈指の自由で民主的な国であることが示されました。

しかし、2016年にトランプ氏が米大統領選挙で勝利した後、0.72近辺まで急低下しました。彼の勝利は、民主主義の対局にある分断を利用したものだったといわれています。この急低下は、彼の横暴ぶりが米国の民主主義を大きく傷つけたことを示唆しています。

そして今、トランプ2.0が始まり、再び同指数が急低下する可能性が高まっています。以下の図のとおり、西側の超大国である米国の民主主義の行き詰まりは、2010年ごろから続く、世界全体の民主主義の停滞、ひいては世界分裂を加速させる可能性があります。

世界分裂は戦争を激化させたり、非西側の資源国の出し渋りを拡大させたりするおそれがあります。戦争激化は有事ムード拡大を、資源の出し渋り拡大はインフレ拡大の要因になり得ます。こうした傾向が強まる1年目が2025年であると、考えられます。

多くの個人投資家の皆さまに関心を抱いていただいている金(ゴールド)の価格は、2025年も細かく短期的に上下しつつも、上値を切り上げる可能性があります。また、2025年が将来的な長期上昇トレンドの一部となる可能性もあります。

この数回で、NISAという2024年に使い勝手がよくなった制度を使って金(ゴールド)を買うためのアイデアを述べました。「[Vol.1894] NISA利用時の銘柄選定フロー」で述べた図、「NISAを使った金(ゴールド)投資を行う際のフロー(例)」などを再度ご確認の上、ご自身に合った商品をお探しいただけましたら幸いです。

図:2010年ごろ以降の世界分断発生とコモディティ(国際商品)価格上昇の背景
図:2010年ごろ以降の世界分断発生とコモディティ(国際商品)価格上昇の背景
出所:筆者作成 イラストはPIXTA

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。