[Vol.1945] 総悲観でも下落が軽微な銘柄が複数あり

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。59.87ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。3,045.91ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。25年09月限は15,580元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。25年05月限は510.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2130.91ドル(前日比10.11ドル拡大)、円建てで10,097円(前日比66円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月7日 18時48分時点 6番限)
14,310円/g
白金 4,213円/g
ゴム 286.1円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,097円/mmBtu(25年7月限 3月21日17時47分時点)

●NY原油先物 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物 日足  単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「総悲観でも下落が軽微な銘柄が複数あり」
前回は、「『見えないものを』見ようとする意識」として、誠実、真摯を意味する「インテグリティ」と現代社会を生きる人との関係を確認しました。

今回は、「総悲観でも下落が軽微な銘柄が複数あり」として、主要銘柄の騰落率(2025年4月1日と7日午前を比較)を確認します。

トランプ氏がけしかけた関税戦争により、各国の主要株価指数が軒並み急落し、不安が拡大しています。こうした中、原油相場が急落すれば不安は解消される、というシナリオが各所で浮上しています。果たして、原油相場急落という救世主は現れるのでしょうか。

以下は、最近の主要銘柄の騰落率です。トランプ氏が相互関税について言及し、世界的な株価急落がはじまった4月2日の前日(1日)と7日午前の騰落率です。(日本時間)


図に記した20銘柄のうち、カカオは上昇しています。世界が総悲観におちいる中、比較的取引高が少ない同市場を、投機筋が逆張りの発想で物色している可能性があります。

下落が比較的軽微なトウモロコシ、小麦、大豆といった穀物は、中国が米国からの輸入品に対して関税を上乗せした「報復関税」の対象品目で、中国が米国から輸入する量が減少することが想定されています。

想定どおりとなると、米国ではモノ余り、ブラジルなど中国に穀物を供給している国ではモノ不足が起きる可能性があります。ブラジルなど、米国以外の穀物供給国におけるモノ不足への懸念が、足元の穀物相場の下落を軽微にしていると、考えられます。

中でも特に下落が軽微だったトウモロコシについては、トランプ政権がバイオエタノールを15%混ぜたガソリン(E15)の年間販売実施を掲げており、今後、エタノール向けのトウモロコシ需要が増加する思惑が浮上している、という背景もあります。

コーヒーのほかオレンジジュースの下落率が比較的高くなっています。このことは、数年間続いている食品小売価格の高騰劇を終わらせる可能性を高めています。また、銅、原油などの産業用に多用される資源の下落率が高くなっていることは、足元の世界的な景気悪化を回復させる起爆剤になると、指摘されています。

貴金属については、金(ゴールド)の下落率は比較的軽微ですが、「変動率が高い金(ゴールド)」とも言える銀の下落率は、暴落が報じられている原油を上回っています。2020年春に勃発したコロナショックの際、金(ゴールド)も下落しました。金(ゴールド)が下落してしまうほど、関税戦争が勃発した今の世界情勢は悪い(酷い)と言えます。

原油について、ヨーロッパで取引されているブレント原油と米国で取引されているWTI原油※の下落率を比べると、WTI原油の方がおよそ1%、大きくなっています。このことは、ヨーロッパよりも米国に、悲観的なる要素が多いことを示唆していると言えます。

※WTI原油:米国の西テキサス地域で産出されるガソリンなどを比較的多く抽出できる原油。West Texas Intermediate。

図:主要銘柄の騰落率(2025年4月1日と7日午前を比較)
図:主要銘柄の騰落率(2025年4月1日と7日午前を比較)
出所:Investing.comのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。