[Vol.1966] 米国発、世界の民主主義後退に警戒

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。61.06ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。3,332.99ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。25年09月限は14,620元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。25年06月限は472.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2343.64ドル(前日比17.14ドル拡大)、円建てで11,190円(前日比4円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月9日 19時03分時点 6番限)
15,628円/g
白金 4,438円/g
ゴム 303.9円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,097円/mmBtu(25年7月限 3月21日17時47分時点)

●NY金先物 月足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物 月足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「米国発、世界の民主主義後退に警戒」
前回は、「大豆:中国の米国輸入依存度の高さが露呈」として、大豆:トランプ2.0始動後およそ100日間のトピックを確認しました。

今回は、「米国発、世界の民主主義後退に警戒」として、2010年ごろ以降の世界分断と高インフレ(長期視点)の背景を確認します。

V-Dem研究所(スウェーデン)は、世界各国の民主主義に関わる情報を数値化して多数の指数を公表しています。自由民主主義指数もその一つです。

法整備、裁判制度、言論の自由など、民主主義に関わる多数の情報を数値化したこの指数は、0と1の間で決定し、0に接近すればするほど、その国が自由で民主的な度合いが低いことを、1に接近すればするほど自由で民主的な度合いが高いことを意味します。

米国の同指数は、東西冷戦のさなか、米国が旧ソ連や旧ソ連と考え方を同じくする国々と明確に異なる自由で民主的な姿勢を強めたことを反映し、大きく上昇しました。

2001年に同時多発テロ発生をきっかけとした混乱によって一時的に低下したものの、その後は反発して0.85近辺に達し、米国が世界屈指の自由で民主的な国であることが示されました。

しかし、2016年にトランプ氏が米大統領選挙で勝利した後、0.72近辺まで急低下しました。彼の勝利は、民主主義の対局にある分断を利用したものだったといわれています。この急低下は、彼の横暴ぶりが米国の民主主義を大きく傷つけたことを示唆しています。

そして、トランプ2.0が始まり、再び同指数が急低下する可能性が高まっています。以下の図の通り、西側の超大国である米国の民主主義の行き詰まりは、2010年ごろから続く、世界全体の民主主義の停滞、ひいては世界分裂を加速させる可能性があります。

トランプ氏がもたらす可能性がある民主主義の停滞や世界分裂は、有事ムード拡大だけでなく、長期視点で起きている非西側の資源国による出し渋りを拡大させ、高インフレを長期化させる要因になり得る点に留意が必要です。

トランプ氏が米国の大統領である間は、金(ゴールド)も原油も大豆も、短期的な上下をこなしつつ、長期視点では高止まりが続く可能性があると、筆者は考えています。

図:2010年ごろ以降の世界分断と高インフレ(長期視点)の背景
図:2010年ごろ以降の世界分断と高インフレ(長期視点)の背景
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。