[Vol.1968] 食品価格高騰は「長期的な大問題」

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。62.10ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。3,261.09ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年09月限は14,995元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。25年06月限は479.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2271.29ドル(前日比20.94ドル拡大)、円建てで11,062円(前日比74円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月13日 大引け時点 6番限)
15,584円/g
白金 4,522円/g
ゴム 315.1円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,097円/mmBtu(25年7月限 3月21日17時47分時点)

●シカゴ大豆先物 月足  単位:ドル/ブッシェル
シカゴ大豆先物 月足  単位:ドル/ブッシェル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「食品価格高騰は『長期的な大問題』」
前回は、「トランプ関税のあおりを受ける大豆」として、トランプ2.0始動後、約100日間で生じた大豆におけるトピックを確認しました。

今回は、「食品価格高騰は『長期的な大問題』」として、食品に関わる国際商品の価格を押し上げている材料(2025年5月時点)を確認します。

「トランプ関税」は、大きな問題です。今後も注意深く、その動向を観察・対応していかなければなりません。ただ、食品価格高騰は、トランプ関税によるマイナスの影響が大きくなる何年も前から起きていました。

以下のように、食品に関わる国際価格を押し上げている材料を、短期と長期に二つの時間軸に分けて整理しました。トランプ関税は今のところ「短期」の材料の一つにすぎません。食品価格高騰の理由と動向を深く考えるためには、長期の材料に重点を置く必要があります。

長期視点の材料には、(3)世界的な人口増加、(4)ESG起因の価格上昇圧力、(5)異常気象の頻発、(6)耕作地を他の用途へ転用、(7)投機資金の長期滞留、(8)世界分断起因の出し渋り、(9)エネルギー価格の高止まりなどが挙げられます。

(3)については、新興国における嗜好品を求める人口の増加や、先進国における生活習慣の変化が、(4)については、環境配慮をきっかけとした耕地面積の拡大鈍化や、人権配慮をきっかけとした買い取り価格上昇の機運が目立っていることが、長期視点の上昇圧力を強める要因となっていると、考えられます。

(5)については、世界各地で異常気象が頻発し、農産物の生産量が減少する可能性が高い状態が続いていること、(6)については、より収益性の高い植物を栽培したり、鉱物資源の採掘を優先したりするケースが目立っていること、(7)については、リーマンショック(2008年)やコロナショック(2020年)の後に欧米の中央銀行が行った大規模な金融緩和によってもたらされた投機資金が市場に長期で滞留していること、などです。

(8)については、食品の原材料を生産する、国々の民主度が低下傾向にあり、出し渋りのリスクが高まっていること、(9)については、生産の現場で、輸送や燃料のコスト、電気代が上昇していること、などです。

こうした(4)から(9)が同時にもたらす長期視点の上昇圧力を受けて、食品価格は(短期視点では反落は起きつつも)長期視点で高止まりしていると言えます。食品価格高騰の背景を知るためには、世界の人口動態、ESG、異常気象、転作、世界の分断、出し渋り(資源の武器利用)、エネルギー価格など、広範囲に目を配る必要があります。

図:食品に関わる国際商品の価格を押し上げている材料(2025年5月時点)
図:食品に関わる国際商品の価格を押し上げている材料(2025年5月時点)
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。