[Vol.1971] 新興国発の需給ひっ迫懸念

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。61.88ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反落などで。3,225.14ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。25年09月限は14,985元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。25年07月限は459.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2233.84ドル(前日比1.94ドル拡大)、円建てで10,673円(前日比288円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月16日 13時54分時点 6番限)
15,153円/g
白金 4,480円/g
ゴム 314.5円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,097円/mmBtu(25年7月限 3月21日17時47分時点)

●シカゴ大豆先物 月足  単位:ドル/ブッシェル
シカゴ大豆先物 月足  単位:ドル/ブッシェル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「新興国発の需給ひっ迫懸念」
前回は、「出し渋りという名の『資源の武器利用』」として、穀物の主要生産国と自由民主主義指数を確認しました。

今回は、「新興国発の需給ひっ迫懸念」として、主要穀物(トウモロコシ、大豆、小麦)の人口一人当たりの消費量を確認します。

穀物の需要面に目を移します。時間軸は短期ではなく、長期です。新興国における人口の増加は、今後の価格動向にどのような影響を与えるのでしょうか。

以下のグラフは、人口一人当たりの主要穀物(トウモロコシ、大豆、小麦)の消費量の推移です。家畜のえさなど、間接的に消費されるケースも含んでいます。先進国と新興国・途上国の分類は、国際通貨基金(IMF)の基準としました。

2023年時点で、先進国では一人当たり、同穀物を677キログラム、消費しています。一方で新興国・途上国においては245キログラムです。経済的に豊かな国ほど、穀物を多く消費していることが分かります。

新興国・途上国の経済が発展すれば、穀物の消費量は増加すると考えられます。現在の先進国と同じ生活水準になった場合、新興国・途上国での同量は2.5倍程度になります。人口が先進国よりも遥かに多い新興国・途上国で穀物の消費量が増大した場合、世界規模で需給ひっ迫が目立つ可能性があります。

さらに、これらの穀物の収穫面積の推移に注目します。先進国(オーストラリア、米国、カナダ、フランスなど)の収穫面積はすでに頭打ちです。新興国・途上国は増加傾向を維持していますが、報じられているとおり、森林伐採などの環境破壊を伴う面積拡大であると、考えられます。

いずれ、環境保護の観点から、新興国・途上国の収穫面積の増加が止まる可能性があります。長期的には、世界全体として、需要増加と供給制約が同時進行する可能性があります。

この数回で、食品価格高騰が収まらない理由をまとめました。「トランプ関税」という足元の材料だけでなく、人口動態や食文化、資源国の思惑などの長期視点の材料に注目することではじめて、食品価格の今後の動向が見えてきます。まだしばらく、食品価格高騰が続く可能性があると、筆者は考えています。

図:主要穀物(トウモロコシ、大豆、小麦)の人口一人当たりの消費量 単位:キログラム
図:主要穀物(トウモロコシ、大豆、小麦)の人口一人当たりの消費量 単位:キログラム
出所:米農務省(USDA)、国際連合(国連)のデータおよび国際通貨基金(IMF)の資料を基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。