過去の米政府機関閉鎖時の金相場は、閉鎖を織り込みながら上昇し、閉鎖が長く続くと、一段高と言うパターンだ。2018年には、トランプ政権と議会のメキシコ国境壁予算を巡る対立から、12月から翌年1月までの35日間。政府機関の一部が閉鎖された。1995年12月~1996年1月にはクリントン政権vs下院共和党の対立で21日間の政府機関閉鎖、2013年10月にはオバマ政権下で議会が医療制度改革を巡った紛争で16日間の閉鎖となった例がある。今回も最終的には妥結するから問題ないとの楽観的な見方もあるが、短期間で決着が付かない場合、ここまで、米利下げ期待を背景に、共に史上最高値を更新してきた金相場とNY株価指数は、本来の逆相関の動きに戻るかもかもしれない。NYダウは過去、長期の政府機関閉鎖に対しては弱気で反応している。主要3指数が軒並み史上最高値を更新している中、過去の10月の株式ショック安なども連想されやすい時間帯だ。一方、短期的な過熱感は高まっており、政府機関閉鎖が長引かず債務上限拡大決定なら、調整(値幅or日柄)が入るだろう。NY金の月間騰落傾向を見ると、10月は弱気が確認される。インド・中国の需要大国の端境期に当たることや、株価下落の損失補填的な売りなどが背景だ。ただし、コロナ危機で世界の主要国が一様に金融緩和を行った結果、過剰流動性が空前の規模にまで膨れ上がり、世界中の債務も膨れ上がっている。IMFの報告では、2025年3月末時点の世界の政府債務は324兆ドル(約4.6京円)までに拡大している。リーマンショック時には、中国が50兆円に及ぶ巨額資金を拠出し・世界経済の救世主となったが、当時は負債が少なかった中国も、現在は多額の債務を抱えている。近づいている「金融危機」を救える国は、見当たらない。「つなぎ予算」可決絡みで付ける10月の金調整安は、年末年始高パターンの買い場を提供することになるだろう。

