トランプ大統領のFRB批判や、暗号資産推進に加え、今回の米債務問題と言う個々の「点」と「点」を結んでいくと、一つのキーワードが浮かんでくる。「通貨発行権」を巡る戦いだ。アメリカ大統領と通貨発行権の戦いは、米国独立直後から続く、政治と金融権力のせめぎ合いの歴史だ。独立戦争中の「コンチネンタル紙幣」によるインフレでの信用失墜から、憲法で「州政府による通貨発行は禁止」され、通貨発行権は連邦政府の管理下に置かれることになった。これに対し、リンカーン大統領は、南北戦争の戦費調達で「グリーンバック紙幣(政府直接発行)」を導入したが、暗殺された。同じく暗殺されたガーフィールド大統領も通貨制度改革に積極的で、暗殺前の演説で「通貨を支配する者が国家を支配する」と発言したことで陰謀論が流布した。更に、ケネディ大統領も1963年に米財務省に銀担保の証書(Silver Certificates)発行権を与える「大統領令11110号」に署名。ドルをFRBではなく政府直轄で発行する布石だったが、暗殺により、「通貨発行権を独占している金融勢力に挑戦した大統領は暗殺される」という陰謀論が、確たる裏付けもないまま現在でも語られている。
クグラー元理事の後任には2024年11月の「マールアラーゴ合意」で有名になったスティーブン・ミラン米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長が決定した。「マールアラーゴ合意」の目的は「ドルの準備通貨としての地位は維持しつつも、ドルを切り下げ、アメリカの製造業の競争力を強化するように、国際決済システムを作り変える必要がある」だ。
トランプ政権の戦略は、ドル覇権の維持とデジタル資産市場の主導権確保という二つの目標を同時に達成しながら通貨発行権を得ようとするものだが、陰謀論も巻き込んでマーケットの変動を高めるだろう。マーケットに対する懸念・不安感が高まれば高まるほど、「安全資産」としての金が注目され、金の価格水準を押し上げることになる。

クグラー元理事の後任には2024年11月の「マールアラーゴ合意」で有名になったスティーブン・ミラン米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長が決定した。「マールアラーゴ合意」の目的は「ドルの準備通貨としての地位は維持しつつも、ドルを切り下げ、アメリカの製造業の競争力を強化するように、国際決済システムを作り変える必要がある」だ。
トランプ政権の戦略は、ドル覇権の維持とデジタル資産市場の主導権確保という二つの目標を同時に達成しながら通貨発行権を得ようとするものだが、陰謀論も巻き込んでマーケットの変動を高めるだろう。マーケットに対する懸念・不安感が高まれば高まるほど、「安全資産」としての金が注目され、金の価格水準を押し上げることになる。
