[Vol.2097] 「思考停止」は「適切に使うもの」に

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。59.47ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。4,025.69ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。26年01月限は15,295元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。26年01月限は458.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2496.74ドル(前日比22.06ドル縮小)、円建てで13,288円(前日比3円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月18日 17時03分時点 6番限)
20,306円/g
白金 7,018円/g
ゴム 326.5円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY金先物 月足 単位:ドル/トロイオンス

出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「『思考停止』は『適切に使うもの』」に
前回は、「『有事の金』『逆相関』」も思考停止の一種として、国内地金大手の金(ゴールド)小売価格(税込)年間平均の前年比を、確認しました。

今回は、「『思考停止』は『適切に使うもの』」にとして、「思考停止」の意味の変遷を、確認します。

「思考停止」という言葉について考えます。諸資料を参考に以下の図を作成しました。

「思考停止」は1960年代から1990年代にかけて、心理や教育などの特定の学術分野において、自分で考えず外部の価値観や常識に依存する状態、あるいは固定観念にとらわれて検証しようとしない思考態度という意味で使われたとされています。

2000年代に入り、インターネットが普及し始めると、インターネット上の掲示板などで相手の意見を軽めに否定するための言葉として使用されるようになりました。

そして、2010年代に入り、スマートフォンの普及に伴い、SNSの利用が拡大すると、社会問題に関する意見の可視化とともに、「浅い議論」「単純化された主張」を批判する言葉として使われ始めました。

同時に、SNS上では「思考停止」という言葉が、「それは常識だ」「みんなやっている」「反対している人は勉強不足」「前例がない」「科学的に正しい」といった、特定の立場の人が都合よく使う言葉の背後に存在する場面が見られるようになりました。

こうした言葉は、用いるだけで、しばしば議論の流れを大きく変えることができ、必要な議論を止める作用さえあるため、「魔法の言葉」などと言われることがあります。

そして近年、「思考停止」はさらなる変革を遂げ、「条件付きで肯定する意味」を持つ場面が出てきました。

心理や認知の分野において、膨大な情報に常に全力で向き合うことができない人間の脳にとって、思考停止は悪ではなく、脳の省エネ機能という見方が広まるようになりました。

ルール化により、ある程度思考を停止した状態でも運営される状態をつくる試みも、拡大しました。これらは広い意味で「思考停止を肯定する」考え方だといえます。

また、熟慮の余地を残す、過度な自己反省の遮断、などの意味においても「思考停止」は肯定されます。さらには、情報過多時代における身を守るため、全てを考えない、意図して情報と距離を置くなどの、思考停止の意味を含む戦略が注目され始めています。

中には、常に説明責任を求める文化や、過度の自己最適化への対抗策や、自嘲や脱力の意味を持つジョークとして「思考停止」が役立つ場面もあります。こうして考えると、近年の「思考停止」は、「適切に使うもの」という側面を持っているといえます。

図:「思考停止」の意味の変遷

出所:各種情報源より筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。