週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比0.56ドル安の59.49ドル、ブレント原油は0.21ドル安の63.79ドルとなった。

 前週末の原油市場は、地政学リスクや米国の政策動向、さらにOPEC・IEAによる需給見通しの修正が交錯し、方向感を欠きながらも材料ごとに上下へ振れる不安定な展開となった。米国によるロシア制裁の影響を見極めたいとの市場心理が根強く、底堅い推移となったものの、東京時間にはハンガリーがロシア産原油の制裁適用から除外される見通しが伝わり、他の地域でも同様の例外が認められるとの観測が強まったことで戻りが売られる展開となり、上値は抑えられた。10日は、ウクライナがロシアの製油所をドローン攻撃したとの報道を受けて供給懸念が高まり、米政府機関の一部閉鎖が解除されるめどが立ったことによるリスクオフ後退も重なり、価格の支援材料となった。11日になると米政府機関閉鎖の終了が近いとの期待が市場心理を押し上げ、ロシア製油所の停止を背景に製品市況が上昇したことから原油もつれ高となった。12日は、OPEC月報において石油需要見通しが従来の供給不足から均衡~供給過剰へと下方修正されたことで、市場は需給緩和観測を意識し反落した。13日は、米政府機関の一部閉鎖が解除される見込みとなり、感謝祭休暇を控えた燃料需要の増加期待が価格を支える一方、IEA月報で2026年に最大日量409万バレルの供給過剰が発生するとの見通しが示され、依然として上値は重い状況が続いた。期間中の原油市場は短期的にはロシア関連の供給リスクが下支えする一方、中長期の需給見通しは緩和方向に傾いており、強弱材料が交錯する中で振れ幅の大きい展開が続いた。


みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート
出所:みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート

 今週の原油市場は、ロシア関連の地政学リスクの高まりと、OPEC・IEAが示した中期的な供給過剰見通しが綱引きを続ける構図となり、ボラティリティは高めではあるものの、方向感はやや限定的となる展開が想定されます。特に、ノヴォロシースク港をはじめとしたロシアの油関連インフラが攻撃を受けるケースが増えていることから、供給懸念が短期的に価格の下支えとなりやすい。一方で、OPEC月報で需要見通しが引き下げられたほか、IEAも2026年にかけての供給過剰を指摘しており、中期的な上値を抑える材料が相次いでいる。これらの要因が同時進行するため、来週は急騰後の反落、あるいは急落後のリバウンドなど、ボラティリティの大きい展開を想定する必要がある。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

岡地株式会社
国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。