[Vol.2107] 減産をしながら増産をするOPECプラス

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。59.36ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。4,232.20ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。26年05月限は15,190元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。26年01月限は448.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2572.65ドル(前日比37.95ドル拡大)、円建てで13,705円(前日比8円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月3日 18時20分時点 6番限)
21,400円/g
白金 7,695円/g
ゴム 326.2円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY原油先物 月足 単位:ドル/バレル
NY原油先物 月足 単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「減産をしながら増産をするOPECプラス」
前回は、「重要な会合で各減産の方針を維持した」として、OPECプラスの各種会合について(2025年12月時点)を、確認しました。

今回は、「減産をしながら増産をするOPECプラス」として、自主減産実施八カ国の原油生産量と協調減産の動向(2020年4月~)を、確認します。

OPECプラスにおいて協調減産に参加している国々の原油生産量、協調減産の基準量、協調減産における生産量の上限の三つのイメージを確認します。

日量200万バレルの協調減産は2026年の年末まで続くことが決定しています。そして八カ国による自主減産を含んだ実際の原油生産量を見てみると、自主減産が始まった2023年5月から減り始めたことが分かります。また自主減産の縮小が始まった2025年4月から生産量が増加し始めたことも分かります。

以下の図のとおり、自主減産を実施している八カ国の動向を見ても現在停止している増産が再開したとしても、増加が想定される原油生産量は限定的です。2026年4月以降、自主減産の縮小が本格化すると考えられますが、この場合でも今から日量百数十万バレルの増加にとどまります。自主減産の縮小という名前の増産には限度があります。

足元、自主減産の縮小はまだ完了していないため、実質的に自主減産は継続しています。そのためOPECプラスは協調減産と自主減産縮小という名前の増産を同時進行させていることが分かります。

このことはOPECプラスの動向をつかみにくくしている大きな原因ですが、時間軸を加味して考えると分かりやすくなります。協調減産は長期視点の活動です。

一方で自主減産あるいは、自主減産の縮小という名前の増産は短期視点の活動です。ですので、原油相場へは、協調減産継続については長期視点の上昇圧力をかける要因、自主減産の縮小という名前の増産については短期視点の下落圧力をかける要因といえます。

図:自主減産実施八カ国の原油生産量と協調減産の動向(2020年4月~) 単位:千バレル/日量
図:自主減産実施八カ国の原油生産量と協調減産の動向(2020年4月~) 単位:千バレル/日量
出所:ブルームバーグのデータおよびOPECの資料を基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。