[Vol.2122] EUの方針撤回案はプラチナ相場に追い風

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。58.51ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。4,525.25ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。26年05月限は15,650元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。26年02月限は444.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2225.9ドル(前日比7.60ドル拡大)、円建てで12,743円(前日比91円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月24日 18時48分時点 6番限)
23,047円/g
白金 10,304円/g
ゴム 337.4円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NYプラチナ先物 月足 単位:ドル/トロイオンス
NYプラチナ先物 月足 単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「EUの方針撤回案はプラチナ相場に追い風」
前回は、「米国利下げはプラチナ相場に追い風」として、FRB利下げ実施時に想定されるプラチナ市場を取り巻く環境を、確認しました。

今回は、「EUの方針撤回案はプラチナ相場に追い風」として、EUの新方針案を、確認します。

EU(欧州連合)の2035年までに新車販売におけるエンジン車(ディーゼル車、ガソリン車)の台数をゼロにするという方針の撤回・修正の動きは、減少していた欧州地域における自動車向けプラチナ需要が増加する可能性を大きくしています(4)。(以前の「[Vol.2120] 2026年のプラチナ相場も強気継続か」参照)

EUは、今のところ「引き続き、ゼロエミッション(二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を実質ゼロにする)への移行は進めるが、現状では柔軟性が必要」と述べています。この柔軟性が今回の方針撤回・修正の動きの原動力になっています。

修正案では、自動車メーカー(全体)としてEVなどを普及させ、二酸化炭素の排出量を90%削減し(もともとは100%だった)、残りの10%の枠内でエンジン車(ガソリン車・ディーゼル車)の販売が可能になるとしています。そして、その10%分の二酸化炭素を削減するため、低炭素鋼を用いたり、バイオ燃料や合成燃料を導入したりする方針です。

こうした方針の撤回・修正の動きの背景には、ドイツやイタリアなどのEU域内の自動車産業の規模が大きい国からの要望があったこと(既存産業の再興)、EVの普及において中国が域内で台頭することに懸念が高まっていること(セキュリティリスク)、EVが寒冷地で不利であること、電池・部品などの供給に問題を抱えていることなどへの対応に時間とお金がかかることなどが挙げられます。

想定される影響として、EUにおけるプラチナやパラジウムなどの自動車排ガス浄化装置向け需要が増加することが挙げられます。この方針の撤回・修正は現時点で案であり、決定したわけではありませんが、決定と需要増加を先取りするかのように、案が公表された12月16日前後から、プラチナ相場は特に騰勢が強い状態が続いています。

図:EUの新方針案
図:EUの新方針案
出所:各種資料を基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。