[Vol.2124] プラチナ鉱山生産量の減少傾向は継続へ

著者:吉田 哲
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原油反発。ナイジェリアを巡るリスクの高まりなどで。58.59ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米主要株価指数の反落などで。4,547.80ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。26年05月限は15,780元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。26年02月限は441.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2105.3ドル(前日比149.70ドル縮小)、円建てで12,564円(前日比220円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月26日 17時41分時点 6番限)
23,292円/g
白金 10,728円/g
ゴム 341.2円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NYプラチナ先物 月足 単位:ドル/トロイオンス
NYプラチナ先物 月足 単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「プラチナ鉱山生産量の減少傾向は継続へ」
前回は、「自動車向け需要は長期視点で増加するか」として、プラチナの自動車排ガス浄化装置向け需要の推移を、確認しました。

今回は、「プラチナ鉱山生産量の減少傾向は継続へ」として、プラチナの国別鉱山生産量(5年間の平均)を、確認します。

プラチナの供給面に目を移します。以前の「[Vol.2120] 2026年のプラチナ相場も強気継続か」で述べた、中長期に分類した鉱山生産(5)と、超長期に分類した「資源武器利用」懸念(6)について確認します。

以下のグラフは、プラチナの国別鉱山生産量(5年間の平均)の推移です。2010年ごろから、減少しています。最主要国である南アフリカ共和国の生産量が減少している影響が大きいです。

同国の生産量減少の背景には、地下数千メートルまで掘り下げなければ良質な鉱石を獲得できなくなったことや、労働者の安全性を確保するための法整備が進んだり、鉱山の操業に必要な電力供給に支障が生じたりしていることが、挙げられます。

この傾向が変わらなければ、鉱山生産(5)をきっかけとした、中長期視点のプラチナ相場への上昇圧力は継続すると考えられます。

超長期に分類した「資源武器利用」懸念(6)について確認します。プラチナの主要鉱山生産国の自由民主主義指数の推移を確認します。スウェーデンのV-Dem研究所が算出・公表している「自由民主主義指数」の世界平均の推移が示すとおり、2010年ごろから、世界の民主主義は後退しています。

そしてそれにより、世界の分断が深化し、資源を持つ非西側諸国において、自国の資源供給の安定、西側諸国への影響力の安定、国際価格の安定(≒高止まり)の三つを一度に獲得するべく「資源の武器利用」を行う動機が強くなってきています。

非西側の産油国の集団であるOPECプラス※の原油の減産も、中国のレアアースの輸出制限検討も、武器利用の側面があります。また、ウクライナ戦争の勃発後、西側諸国の多くがESGのS(社会)の観点から、戦争を勃発させたロシアからエネルギーや農産物、金属などの購入を控えるようになりました。この点もまた、資源の武器利用の意味が含まれています。

※OPECプラスとは、石油輸出国機構(OPEC)に加盟する12カ国、そしてロシアやカザフスタンなどの非加盟の11カ国、合計23カ国の産油国のグループの俗称です。原油の生産シェアはおよそ59%です(2025年10月時点)

プラチナの主要な鉱山生産国の自由民主主義指数は、世界全体の流れに乗じるように、2010年ごろ以降、低下傾向にあります。このことは、プラチナも「武器利用」の対象になり得ることを示唆しています。

今後、プラチナの主要な鉱山生産国の自由民主主義指数の低下が目立てば、「資源武器利用」懸念(6)をきっかけとした、超長期視点のプラチナ相場への上昇圧力は大きくなると考えられます。

2026年も、プラチナ相場には、短中期、中長期、超長期、それぞれのテーマをきっかけとした上昇圧力が提供される可能性があります。そして通期で、同じ貴金属のグループのリーダー格である金(ゴールド)の相場が、プラチナ相場をけん引する可能性があります。

しばしば反落・調整をこなしながら、上値を切り上げ、歴史的高値を更新する展開になると、考えています。2026年も、プラチナ相場の動向に注目していきたいです。

図:プラチナの国別鉱山生産量(5年間の平均) 単位:千オンス
図:プラチナの国別鉱山生産量(5年間の平均) 単位:千オンス
出所:Johnson Mattheyのデータを基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。