[Vol.2140] 「資源の呪い」にかかった両国の不安継続

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。59.98ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。4,918.45ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。26年05月限は16,315元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。26年03月限は441.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2283.6ドル(前日比52.90ドル縮小)、円建てで13,467円(前日比118円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月23日 17時38分時点 6番限)
26,148円/g
白金 12,681円/g
ゴム 355.9円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY金先物 月足 単位:ドル/トロイオンス
NY金先物 月足 単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「『資源の呪い』にかかった両国の不安継続」
前回は、「ベネズエラとイランの原油生産シェア5.4%」として、イランとベネズエラの原油生産シェア(2025年10月時点)を、確認しました。

今回は、「『資源の呪い』にかかった両国の不安継続」として、イランとベネズエラの輸出額を、確認します。

原油の確認埋蔵量(上位5カ国)の推移を確認します。2024年時点で、ベネズエラが1位、イランが3位です。(カナダのオイルサンドを除く)。このグラフを見て、「ベネズエラとイランが大量の原油を持っている」と、感じる人は少なくないでしょう。

ただ、イランとベネズエラの国力は大きく低下しており、サウジアラビアやイラク、アラブ首長国連邦(UAE)など、他の産油国のように機動的に原油生産量を増やすことは難しい、という事情があります。

その原因の一つに、まさに「原油を大量に持っている」というイメージが関わる、「資源の呪い」が挙げられます。

資源の呪いとは天然資源を持つ国が、経済発展や民主化の面で、資源を持たない国よりも不利な状況に陥る現象のことです。こうした事象が発生する原因に、自国の資源が莫大(ばくだい)な利益をもたらした成功体験が挙げられます。

こうした成功体験により、資源からの収入に依存して、他の産業が縮小したり、汚職が発生しやすくなったりします(国内事情)。また、当該資源を求める国から政治的な介入を受けやすくなったり、生産国との連携を強いられたりすることもあります(国外事情)。

一度、資源の呪いにかかると、自力でそこから脱却することは困難であり、他国に助けを求めても資源目当ての支援が横行する場合もあります。資源を持っていることが大変な「呪い」のきっかけになってしまうのです。

以下のグラフのとおり、イランもベネズエラも、2000年代前半に輸出額(石油関連を含む合計)が急増し、大きな成功体験を獲得しました。新興国の台頭をきっかけとした世界の石油需要が、強い追い風になったためです。

しかし、その後は、リーマンショック(2008年)が発生して世界の石油需要が減少したり、逆オイルショック(2015年前後)発生や、ESG(≒石油否定)(2010年ごろ以降)拡大によって窮地に立たされたりしました。米国などの断続的な政治・経済への介入によるマイナス面の影響も受けました。

すでに、2000年代前半の大きな成功体験を獲得した影響で、既得権益層が利益を搾取したり、汚職がまん延したりしていました。国内では大変なインフレ(物価高)が発生し、国民の生活は困窮していました。

世界的な動きと個別の国の事情が重なった結果、イランでは大規模な反政府デモが勃発し、ベネズエラでは国民のおよそ4分の1が国外に逃れる事態に至ったと考えられます。

一度「資源の呪い」にかかると、自国の努力や工夫だけでは、もとの状態に戻ることは困難です。他国の支援があったとしても、資源目当ての支援が横行するリスクも残ります。

イランとベネズエラをめぐる混乱は、まだしばらく、続く可能性があります。このことは、金(ゴールド)相場に、以前の「[Vol.2138] 七つのテーマで金(ゴールド)市場を網羅」で述べた「伝統的な有事」をきっかけとした上昇圧力が続くことを示唆しています。

筆者は、ドル建て金(ゴールド)価格は、細かい上下を繰り返しながら、上昇傾向を維持すると考えています。これにつられて、円建て金(ゴールド)も上昇傾向を維持すると考えています。

図:イランとベネズエラの輸出額 単位:10億ドル
図:イランとベネズエラの輸出額 単位:10億ドル
出所:IMFのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。