イラン要人殺害事件は、OPECプラスの減産順守率の上昇要因

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反発。60ドルの節目割れを機に買いが集まったことなどで。60.11ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,560.55ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。20年05月限は13,135元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。20年03月限は485.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで598.1ドル(前日終値比3.8ドル縮小)、円建てで2,105円(前日終値比56円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(1月9日 12時13分頃 先限)
 5,469円/g 白金 3,364円/g 原油 41,970円/kl
ゴム 201.7円/kg とうもろこし 24,490円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「イラン要人殺害事件は、OPECプラスの減産順守率の上昇要因」

前回は「米国によるイラン要人殺害事件の背景③」として、当該事件がきっかけで発生する可能性がある、トランプ大統領が享受する大統領選挙を戦う上でのメリットを書きました。

今回は「イラン要人殺害事件は、OPECプラスの減産順守率の上昇要因」として、事件とOPECプラスが実施している協調減産について書きます。

OPECプラスの配下組織であるJMMC(共同閣僚監視員会)が公表する月ごとの減産順守率は、減産がうまくいっているかどうかを示す重要なデータです。

OPECプラスは減産を実施する以上、減産参加国の足並みがそろっていることや、減産が目的通り行われて過剰に積み上がった世界の石油在庫減少に貢献していることを示し続ける必要があるため、減産順守率が100%を超えている状態を維持することが求められます。

減産順守率100%以上を維持するためには、減産に参加している国それぞれが、合意内容に基づいた減産を着実に実施することが必要です。

以下のイラクの原油生産量と減産時における生産量の上限を示すグラフのとおり、イラクは、増産傾向にあり、OPECプラス全体の減産順守率上昇を阻害しています。

OPECプラス全体としては、サウジが合意内容以上の減産を行い、イラクのような増産国の肩代わりをしている状態が続いています。

このような状況の中、イラクで事件が起き、米国は、イラクに軍を増派すると同時に、米国の民間人に対してイラクから退去するよう勧告しました。

報道では、イラクから退去することが求められている米国人に、イラク国内の石油関連施設で働く人が含まれているとされ、退去措置により、イラクの原油生産量が減少する可能性があります。

減産合意を破って増産を続けてきたイラクでしたが、事件発生を機に、米国に強制的に減産をさせられ、OPECプラス全体の減産順守率が上昇する可能性があります。

図:イラクの原油生産量と減産時における生産量の上限 単位:千バレル/日量
イラクの原油生産量と減産時における生産量の上限

出所:OPECのデータより筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。