リビアの原油生産量が3分の1になっても、減産順守率は上昇しない

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反落。主要株価指数の反落などで。58.84ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドルインデックスの反発などで。1,560.30ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。20年05月限は12,895元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年03月限は466.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで530.2ドル(前日比5.3ドル縮小)、円建てで1,891円(前日比8円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(1月20日 19時2分頃 先限)
 5,520円/g 白金 3,629円/g 原油 41,580円/kl
ゴム 201.3円/kg とうもろこし 24,830円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「リビアの原油生産量が3分の1になっても、減産順守率は上昇しない」

前回は「サウジ、“自主減産”も“現状追認”!?」として、1月15日に公表されたOPEC月報で明らかになった2019年12月の生産量を含んだ、サウジの原油生産量の推移に注目しました。

今回は「リビアの原油生産量が3分の1に!?」として、目下、供給減少懸念が高まっているリビアの原油生産量について書きます。

内戦が続くリビアにおいて、暫定政権と対立する軍事組織に属する勢力が、石油パイプラインを閉鎖したと報じられました。

これにより、リビア南西部にある2つの主要油田の生産が停止したとのことで、同国の国営石油会社は、同国の原油生産量が日量80万バレル減少する見通しを示しています。

EIAの月次統計によれば、リビアの2019年12月の原油生産量は日量115万バレルです。

ここから日量80万バレル減少した場合、リビアの原油生産量は日量35万バレルになり、同国の原油生産量が3分の1になります。

リビアはOPEC加盟国であるため、減産順守率が上昇する思惑が働きますが、この件で、減産順守は上昇しません。

減産順守率は、実際の削減量を、総会で合意した削減量で除して求めるため、そもそも対象となる国が、総会で削減量が定められる国、つまり減産実施国であるわけです。

このため、2017年1月から始まったOPECプラスの協調減産において一度も減産実施国となったことがない、常時減産免除国のリビアの原油生産量がいくら減少しても、減産順守率は上昇しません。

もちろん、生産量自体の減少は、OPEC、ひいてはOPECプラス全体の生産量の減少に貢献しますので、世界の石油のバランスを引き締めることには役立ちます。

リビアの件は、減産順守という面では無関係ですが、需給バランスを引き締めることには役立つ、と言えます。

図:リビアの原油生産量 単位:百万バレル/日量
リビアの原油生産量

出所:EIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。