サウジ、“自主減産”も“現状追認”!?

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反発。主要株価指数の上昇などで。58.88ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドルインデックスの反発などで。1,554.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。20年05月限は13,075元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年03月限は464.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで533.95ドル(前日比15.35ドル縮小)、円建てで1,898円(前日比13円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(1月17日 19時19分頃 先限)
 5,499円/g 白金 3,601円/g 原油 41,390円/kl
ゴム 206.1円/kg とうもろこし 24,300円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「サウジ、“自主減産”も“現状追認”!?」

前回は「2021年12月、米国の原油生産量は日量1400万バレルに達する!?」として、先月と今月に公表されたEIAの短期見通しから、EIAが示した、2020年と2021年の米国の原油生産量の見通しについて書きました。

今回は「サウジ、“自主減産”も“現状追認”!?」として、1月15日に公表されたOPEC月報で明らかになった2019年12月の生産量を含んだ、サウジの原油生産量の推移に注目します。

以下のグラフは、サウジの原油生産量です。また、赤もしくはグレーの横の破線は減産実施時の生産量の上限です。

15日の月報によれば、サウジの12月の原油生産量は日量976万2000バレルでした。

この値は、2019年12月の会合で合意した追加削減幅(日量16万7000バレル)に、自主的に削減するとしたさらなる削減幅(日量40万バレル)を考慮した、現在の生産量の上限、日量974万4000バレルに非常に近い値です。

つまり、12月の原油生産量は、すでに、会合で決まった追加削減幅に自主的な削減幅を考慮した減産が、ほとんど順守できる量と言えます。

12月の会合終了時、追加削減が決まったものの、新たに大規模な削減をしなくても、すでに足元の生産量が、減産順守ができる水準であったため“現状の追認”と揶揄されました。

言葉では“追加減産”と言っているものの、実態として新たな減産は行われず、世界の石油の需給バランスは引き締まらない懸念がある、ということです。

そして、先述のとおり、12月の生産量の水準が、自主減産分を考慮してもほとんど減産順守状態にあることから、自主減産を含めても“現状の追認”であると言わざるを得ません。

“追加削減を決定した”“自主的にさらに減産をする”、などと言っているものの、ここから新たな削減は行われない可能性があります。

発言の内容と実態に乖離がある点に、今後も注意が必要です。

図:サウジの原油生産量と同国の減産時の生産量の上限 単位:千バレル/日量
サウジの原油生産量と同国の減産時の生産量の上限

出所:OPECのデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。