米シェール、“数”の面で鈍化が鮮明に

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反落。主要株価指数の反落などで。55.55ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドルインデックスの反発などで。1,560.45ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。20年05月限は12,085元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。20年03月限は447.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで549.75ドル(前日比8.35ドル縮小)、円建てで1,947円(前日比3円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(1月24日 18時53分頃 先限)
 5,490円/g 白金 3,543円/g 原油 39,350円/kl
ゴム 179.5円/kg とうもろこし 24,600円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「米シェール、“数”の面で鈍化が鮮明に」

前回は「長期的な原油相場の変動① 第2次オイルショック時、実質価格は120ドルに」として、1975年から最近までのWTI原油価格の値動きを振り返りました。

今回は「米シェール“数”の面で鈍化が鮮明に」として、前々回の「減少ではないが“増加が鈍化”している、米シェール主要地区の原油生産量」に関連し、米シェール主要地区における開発関連指標の状況を確認します。

1月21日(火)に、EIA(米エネルギー省)が公表した米シェール主要地区に関する各種データより、掘削済井戸数と仕上げ済井戸数に注目します。

以前の「シェールの開発過程を確認する」で述べたとおり、同地区のシェール開発工程は、探索・開発・生産の3つに分かれており、真ん中の開発は、前工程の“掘削”と後工程の“仕上げ”に分かれています。

掘削とは、掘削機(リグ)を使って井戸を掘ることで、仕上げとは、掘削した井戸の壁面をセメントで固め、水と砂を少量の化学物質を高圧で注入し、井戸の末端部分を破砕して頁岩層(シェール層)を砕く、原油を抽出するための最終的な作業のことです。

“仕上げ”は、開発工程の中で比較的コストがかかる工程と言われています。

原油を生産するための最終的でかつ、コストがかかる作業であることから、この“仕上げ”を行うことは、原油を生産をして収益を確保することが前提となっていると言えます。

足元、この“仕上げ済井戸数”が減少しているため、同地区の原油生産量が減少する可能性があります。

以前の「米シェール生産の“質”の維持に必要な原油価格の水準とは?」で述べた“質”、つまり新規1油井当たりの原油生産量の状況も考慮する必要がありますが、徐々に、井戸の“数”の面が鈍化しつつあるため、全体的には目先、米シェール主要地区の原油生産量は、増加が鈍化する方向に向かうと考えられます。

図:米シェール主要地区の開発指標とWTI原油価格
米シェール主要地区の開発指標とWTI原油価格

出所:EIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。