新型肺炎感染拡大を受けた商品市場見通し

著者:菊川 弘之
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 2002年11月に発生、2003年7月の収束宣言まで今回と同じように猛威を振るったSARS(重症急性呼吸器症候群)の際の、マーケットの動きを振り返ってみよう。

 原油市場は今回と同じように、SARS発生当初は、需要減少思惑から売り優勢であったが、2003年3月には英米によるイラク攻撃があり、結果としてSARSで売られた安値が、中東の地政学リスクで噴き上げた高値の買い場になった格好だった。

 イラク戦争(第二次湾岸戦争)は、米国が主体となり2003年3月20日から、英国、オーストラリアと、ポーランド等が加わる有志連合によって、イラク大量破壊兵器保持における進展義務違反を理由とする『イラクの自由作戦』の名の下に、イラクへ侵攻したことで始まった。

 2003年5月にブッシュ大統領による「大規模戦闘終結宣言」が出たが、開戦の理由となった大量破壊兵器の発見に至らず、イラク国内の治安悪化が問題となり、戦闘は継続した。2010年8月31日にバラク・オバマにより改めて「戦闘終結宣言」と『イラクの自由作戦』の終了が宣言され、翌日から米軍撤退後のイラク単独での治安維持に向けた『新しい夜明け作戦』が始まった。 2011年12月14日、米軍の完全撤収によってオバマ大統領が、イラク戦争の終結を正式に宣言した。

 原油市場は、2002年末にはSARS(重症急性呼吸器症候群)発生に伴う需要減少・感染拡大を嫌気していたものの、徐々に市場の関心は、中東の地政学リスクに向け、開戦までに、地政学リスクを織り込みながら・囃されながら上昇したこともあり、いざ開戦で「知ったら仕舞い」となった。
 
SARS発生から終息宣言までのNY原油
 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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