新型肺炎感染拡大を受けた商品市場見通し

著者:菊川 弘之
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 今回も新型肺炎の影響次第で短期的には、上下の振れがあるだろうが、今年は、2月11日にソレイマニ司令官没後40日と重なる革命記念日、3月にはイスラエル選挙、米国のスーパーチューズデーなどの政治イベントがある事を考慮すると、新型肺炎拡大を嫌気した原油市場の安値売込みは避けたいと考える。

 NY金と株式(香港ハンセン指数)を振り返ると、SARS発生当時は、NY金も宝飾用の実需が落ち込むのではないかとの懸念で、上値が抑えられたが、アジア株価が下落し始めていくと、金の押し目は「安全資産」として買い直された。

 中東の地政学リスクが高まりを見せたことも、金の買い要因となった。今回の新型肺炎拡大懸念の時も、ファーストアクションは、春節での実需減少懸念だったが、リスク回避の株安・ドル安が顕著になってくると、金の買い意欲が高まっている。

 今回の新型肺炎拡大で、米国の利上げ思惑が、より一層高まり、ドルの上値が抑えられやすいこともNY金の下値を支える要因となる。米連邦準備制度理事会(FRB)は、今週のFOMCで政策金利を据え置く見通し。前回のFOMCで公表された予測で、FRB高官は経済が見通し通りに展開した場合、2020年を通じて政策金利の据え置きを予想している。米中貿易戦争停戦はポジティブとなるが、インフレは依然抑制されている。

 NY金は、1月初めに出来高を伴って付けた上ヒゲ高値の攻防が焦点。CFTC建ち玉明細では、大口投機玉の買い越しは、過去最高水準まで積みあがっており、1月8日高値を上抜けきれなければ、調整も入りそうだ。ただし、下値は限定的だろう。
 
SARS発生時のNY金・香港ハンセン指数
 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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