新型コロナウィルスと金価格

著者:近藤 雅世
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 1月初め、武漢で新型コロナウイルスによる肺炎が発生した報道を聞いたときは、以前SARSが中国南部で流行ったときのことを思い出し、当時、商品価格にそれほどの影響はなかったなと思いつつ、2002年11月から2003年7月の金と原油のチャートを見てみた。

 SARSの感染者数は8096人、37カ国で774人が死亡したという。2003年2月に金も原油価格も上昇しているが、それほど商品価格への影響はなかった。

 ところが、ウイルスの形が太陽のコロナのようだと言われる今回の騒動は、日を追って感染者数が急激に多くなっており、事態はかなり深刻である。

 1月24日イギリスのランカスター大学とグラスゴー大学、そしてアメリカのフロリダ大学の研究者から恐ろしい予測が出た。それは2月4日までに感染者数が25万人~35万人に達するというもので既存の病院では対応しきれなくなるという。

 香港の研究者も、今回のコロナウイルスはSARSの10倍の感染力があると述べている。また、上海、北京、広州、重慶、成都等、中国の主要都市に感染は拡大し、タイ、日本、台湾、香港、韓国に広がるリスクがあるという。

 中国は14都市を封鎖し、国外への団体旅行も禁止した。世界の国々も武漢への渡航制限をしているが、旅行を99%制限したとしても2月4日には24.9%しか感染は減少しないだろうと、このレポートは述べている。

 抗生物質が効かず、ワクチンもないこの肺炎は、治療法がない。ひょっとしたら恐ろしい世界的パンデミックになるかもしれない。この暗雲の襲来を恐怖して、世界の株価は急落し、原油などの商品価格も下落している。

 こんなとき、金価格は安全資産となる。中国の春節における金の需要は急減するだろうが、株式投資から避難する資金は金や円、スイスフランに向かうだろう。別添はNY金、原油、LME銅、上海ゴムの1月28日夕方までの価格推移である。
 

 

 

このコラムの著者

近藤 雅世(コンドウ マサヨ)

1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。
アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。商品ファンドを日本で初めて作った一人。
2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンスを設立。代表取締役社長就任。
毎週月曜日週刊ゴールド、火曜日週刊経済指標、水曜日週刊穀物、木曜日週刊原油、金曜日週刊テクニカル分析と週間展望、月二回のコメを執筆。
毎週月曜日夜8時YouTubeの「Gold TV Net」で金と原油について動画で解説中(月一回は小針秀夫氏)。
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