OPECプラスが持つ“余剰削減分”の意味とは!?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油(WTI先物)反発。主要株価指数の反発などで。50.70ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドルインデックスの反発などで。1,555.35ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年05月限は11,215元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年04月限は399.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで583ドル(前日比6.4ドル縮小)、円建てで2,052円(前日比36円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(2月5日 19時26分頃 先限)
 5,467円/g 白金 3,415円/g 原油 36,550円/kl
ゴム 178.7円/kg とうもろこし 23,900円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足
出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「OPECプラスが持つ“余剰削減分”の意味とは!?」

今回は「OPECプラスが持つ“余剰削減分”の意味とは!?」として、前回書いた、OPEC10カ国の“余剰削減分”が、どのような意味を持つのかについて考えます。

報じられた“減産順守率133%”は、OPECが予定の1.3倍以上の減産をしていることを示します。

つまりOPECは“余剰削減分”を有しながら減産を実施しているわけです。

この余剰削減分の使い道は、大きく2つあると考えらえれます。

1つ目は、2018年6月のOPEC総会で見られた、減産順守率を100%まで引き下げることを容認する、いわば“余剰削減分を増産枠に充てる”という使い方です。

限定的に増産を可能にするもので、当時は“減産緩和”と呼ばれました。

2つ目は、2019年12月のOPEC総会で見られた、減産実施時の生産量の上限を、余剰削減分程度引き下げる、いわば“目標削減量を余剰削減分程度拡大させ、減産を強化したように見せる”という使い方です。

これは、目標削減量を拡大して(生産量の上限を引き下げて)減産強化を前面に押し出す策ですが、現状の生産量のままでも減産順守が容易であることから“現状追認”と呼ばれています。(現在実施中の減産がこのパターンです)

これら2つの共通点は、減産順守を維持できる点ですが、異なる点は、施策が与える市場へのイメージです。イメージは、真逆になります。

1つ目は減産緩和、つまり限定的な“増産”であるため、市場にはOPECの減産実施への姿勢が消極的に映ります。

逆に2つ目は減産強化、つまり、現状追認であるものの“目標削減量の拡大・生産量の上限引き下げ”であるため、市場にはOPECの減産実施への姿勢が積極的に映ります。

足元、緊急会合が予定され、減産強化を行うのではないか?との思惑が強まっていますが、“余剰削減分”を使った減産強化では、需給バランスを引き締める意味がないことに注意が必要です。

図:余剰削減量を用いた“現状追認の減産強化”のイメージ
余剰削減量を用いた“現状追認の減産強化”のイメージ

出所:筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。