NY金、新たなステージ(インフレ)を織り込む流れ

著者:菊川 弘之
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 リーマンショック時には、金は株価下落に伴い損失補填的に売られた後は、最も早く・最も大きく切り返しを見せた。今月のNYダウは、歴史的な下落幅を記録しているが、史上最高値圏ということもあり、下落率ではまだ、上昇トレンドの範囲内の調整にとどまっている。

 NYダウにとって、抵抗線となっている200日移動平均線を上抜けるか否か、自律反発を入れる前の底値候補2月28日安値を維持できるか否かが、NY金の行方を探る上でも重要なポイントだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大の頭打ちが、いつくらいになるかが、各市場にとって最も大きな注目点だが、ジム・ロジャーズは、今月に入り、NY株式市場に関して、「買われすぎになり、今売られている。もちろん、売られた時にはメディアは理由を見つけようとする。いつも理由がないといけない。『買われすぎだったんだ』ではすまない。だから、理由がついたんだ。景気後退なく10年というのは米史上最長であり、いつ来てもおかしくない。新型ウイルスが終わっても、しばらく影響が続けば、景気後退入りの可能性がある。」と警告している。

 また、ロゴフ(元IMFチーフエコノミスト)ハーバード大学教授は、次の景気後退は中国から始まる可能性が高く、実際、すでに始まっているのかもしれないと述べている。

 40年に及ぶグローバリゼーションが間違いなく現在の低インフレの主因であるとすれば、貿易摩擦の高まりに加えて、パンデミックにより国境の敷居を継続的に高めることは、物価上昇圧力の再生をもたらす。このシナリオでは、インフレ上昇は金利を上昇させ、金融・財政政策の両方に難題を突き付けうると指摘している。

 将来的な低インフレから高インフレ移行の可能性も、現在の金市場の上昇の一因かもしれない。東京オリンピックの開催が危ぶまれているが、今後の新型ウイルス感染次第では、延期に加えて、参加見送りをする国も出てくるかもしれない。平和の祭典が、地政学リスクの高まりのきっかけとなるかもしれない。
 

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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