原油暴落の背景と今後の見通し

著者:菊川 弘之
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 年初に発行した「2020年展望レポート」で、≪長期チャートを見ると分るが、原油市場は短期的な変動も大きい市場。短期的に150ドル近辺から30ドル台まで急落するような変動を需給で説明するのは困難。投機マネーの出入りが激しい市場で、同じような値動きを、いつ見せてもおかしくはない≫と指摘したが、週末のNY原油市場は、期待されていた協調減産が合意されずに急落。週が明けての東京市場でも、時間外でNY原油は、30ドルを割り込む暴落となっている。「歴史は繰り返される」であった。

 週末のNY原油(4月限)は、大幅続落。期近物として2016年8月上旬以来ほぼ3年7ヶ月ぶりの安値を付けた。直近の安値を下回ったことで、チャート面からの売りも出て下げ幅が大きくなった。期近から軒並み一代安値を更新。

 新型コロナウイルスの感染拡大懸念の中、5日の石油輸出国機構(OPEC)総会で決定した日量150万バレルの追加減産を、6日のOPECプラスの閣僚級会合で合意しなかったことで、売り圧力が強まった。

 ロシアのノワク・エネルギー相は6日の会合後、「4月1日からはOPECも非加盟国も(減産の)制約がない」と述べたと伝わった。目先の需要減少に加え、17年から続けてきたOPECとロシアなどの協調関係が崩れるとの懸念も強まった。

 「OPECプラス」が減産強化で合意に至らなかったことを受け、サウジアラビアは日量1000万バレルを上回る増産を4月に計画している模様。一方、サウジの国営石油会社サウジアラムコが4月の極東と米国、欧州向け代表油種の公式販売価格(OSP)について、少なくとも過去20年で最大の値下げに踏み切る。同国産原油の販売を可能な限り増やし、シェアを奪う狙い。アジア向けOSPをバレル当たり4-6ドル、米国向けは同7ドル引き下げる。アジア顧客向けのアラブ・ライト原油の価格は6ドル下がり、中東産原油の指標価格を3.10ドル下回る価格に設定される。
 

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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