原油暴落の背景と今後の見通し

著者:菊川 弘之
ブックマーク
 2014年末のOPEC総会でも、協調減産に至らず、米国シェールオイルとの輸出シェア獲得競争にOPEC産油国は移行した。この際は、価格は急落。2016年2月に付けた26ドル台まで大幅続落となった。ただし、原油価格の大幅下落で産油国の破綻リスクも意識されて、2017年以降のOPEC産油国と、ロシアなどの非加盟国との「OPECプラス」体制での協調が始まった。

 今回、OPECは4-6月(第2四半期)に限定し、さらに日量150万バレルの減産を提案したが、ロシアなど非OPEC産油国の同意は得られなかった。新型肺炎感染拡大に伴う需要減少に加えて、本格的な原油の価格戦争が始まるようなら、値頃感無用の下値試しへ。

 シェール潰しも兼ねた輸出シェア獲得競争となった2016年には、26ドル台まで価格は下落した。買いは、チャート上の底打ち確認待ち。

 NY原油は、2018年12月安値を割り込んだ事で、レンジの倍返し~2016年2月安値が下値目標。

 米国債の金利は史上最低だが、社債の金利は上がり出している。ウイルス危機による経営悪化が不可避な業界の社債の金利が大幅上昇(債券価値下落)し、債券破綻への保険であるCDSの指標が急騰(保険料率が急上昇)した。これはリーマン危機の初期にあたるサブプライム危機の際に起きたことと同じ。社債の危機は、債券発行で赤字を埋めて自転車操業してきたシェール会社を破綻させるリスクを秘める。

 米原油生産高は、リグ当たりの生産効率が高まったこともあり、過去最高水準を記録したが、価格低迷・需要減少予想もあり、2019年の米エネルギー産業はパフォーマンス難で、新規設備投資は大きく削られている。
 

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

https://www.nstrading.co.jp/

http://market-samurai.livedoor.biz/