原油暴落の背景と今後の見通し

著者:菊川 弘之
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 原油市場は、シェール減産の確認や、中東の地政学リスクが起きないと底打ちし難い地合いだが、サウジの内政不安やイランの新型肺炎拡大、中東全域のバッタ被害などにも中期的には注意したい。

 原油価格下落により、サウジのムハンマド皇太子体制に揺るぎが出る可能性も浮上している。先週末には、サウジアラビア当局が、サルマン国王の兄弟とおいを国家反逆罪の疑いで拘束。ムハンマド皇太子による王族取り締まりの一環とみられる。拘束されたのはムハンマド・ビン・ナエフ前皇太子と国王の兄弟であるアフメド・ビン・アブドルアジズ・サウド氏。前皇太子の兄弟も拘束された。ムハンマド皇太子にとって、国内の一部王族から根強い支持を受ける前皇太子が米政界や情報機関と親しいことも不安材料だった模様。王家内には国王と皇太子家のサルマン家に過剰な権力が集中していることへの不満が燻る中、ムハンマド皇太子が主導して上場したアラムコ株も公開価格割れで、サウジの経済・社会改革の進展も遅れそうだ。

 このような環境下で、穀物価格が上昇してくると、「アラブの春」と同じように中東・アフリカ地区の地政学リスクが高まる可能性も。

 下値追いが先行する原油価格だが、安値をきっかけに、将来的な上昇の種が蒔かれている状態。
 

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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