原油市場、中長期的には上値リスクが大きい

著者:菊川 弘之
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 世界的な新型コロナウイルス感染拡大の中、3月5日の石油輸出国機構(OPEC)総会で決定した日量150万バレルの追加減産を、6日のOPECプラスの閣僚級会合で合意に至らなかったことを受け、サウジアラビアは日量1000万バレルを上回る増産を発表。本格的なシェア獲得競争が始まるとの見方から原油価格は暴落となった。

 国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、新型肺炎の感染拡大を抑制するための封鎖により世界中で約30億人が影響を受けており、原油需要は20%減少する可能性があると指摘している。20%の減少は日量2000万バレル規模で、世界最大級の産油国であるロシアとサウジアラビアがほぼ生産を停止しなければならないほどの需要が失われる計算となる。

 G20首脳が3月26日に開催したテレビ会議で、今年の議長国サウジアラビアに原油の増産を自粛するよう求める可能性があると報じられ、一部で期待感が高まっていたが、サウジが原油生産を巡り対立するロシアとの減産協議を否定する声明を出し、5月から輸出量を日量1060万バレルの過去最大規模に拡大すると発表したことで戻りが売られた。

 3月26日に米上院を通過した2兆ドル規模の米景気対策法案のなかに戦略石油備蓄(SPR)を積み増すための財源が含まれず、米エネルギー省が米国産原油による備蓄増強を見送ると発表したことも嫌気され、30日には一時19.27ドルまで下げ、2002年2月以来、18年ぶりの安値となった。トランプ米大統領が、全国民に求めている行動制限を当初の3月末から4月末まで延長すると発表。長期化による経済の停滞で原油需要が一段と落ち込むとの懸念も強まった。
 

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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