原油市場、中長期的には上値リスクが大きい

著者:菊川 弘之
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 米エネルギー情報局(EIA)が公表した掘削生産性報告(DPR)によると、4月の主要7地域のシェールオイル生産量は前月比1万8000バレル増の日量907万5000バレルまで増加し、過去最高水準を更新する見通し。大半の地域で減産が見込まれている一方で、テキサス州とニューメキシコ州にまたがる最大シェール層パーミアンからの増産が他地域の減少を相殺する見通し。現段階では、原油価格下落が生産減少につながっていない。

 NY原油は、株価が不安定な間は、短期的には下値リスクがありそうだが、20ドル割れという値位置を考えると、中長期的には上値リスクの方が高いと考える。下値はあってもあと10ドル前後、上値は自律反発でも10-20ドル、何らかの供給障害などがあれば、50-60ドル上昇もあり得るだろう。大底確認はできていないが、底値圏であることは間違いないだろう。

 EIAが発表しているように米シェールの増産傾向に変化はないが、現行の値位置が長く続くようなら、シェール企業発の金融リスクや、財政均衡価格の高いOPEC産油国中心とした経済危機に伴う内政不安などが浮上するリスクもある。原油専門サイト「オイルプライス」は、バレル当たり30ドルで採算の取れる石油会社はエクソンモービルやシェブロンなどの4社のみ。長引けば、シェールオイル企業の半分は経営破綻するだろうとの見通しを示している。先週末に発表された稼働中の米原油掘削装置(リグ)数も前週比40基減の624基に急減しており、時間経過と共にシェール生産も減少に転じそうだ。
 

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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