日量1000万バレル削減では足りない理由

著者:吉田 哲
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原油反落。米国などの減産参加への不透明感からなどで。23.21ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,752.80ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年09月限は10,140元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。20年06月限は290.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1001.3ドル(前日比50.6ドル拡大)、円建てで3,247円(前日比15円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(4月10日 18時59分頃 先限)
 5,841円/g 白金 2,594円/g 原油 25,100円/kl
ゴム 151.2円/kg とうもろこし 22,830円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「日量1000万バレル削減では足りない理由」

前回は「ついに来月からの米シェール減少が確実に!?②」として、前々回触れた米国全体の原油生産量の見通しをもとに、2020年の米シェール主要地区の原油生産量の見通しについて書きました。

今回は「日量1000万バレルでは足りない理由」として、今週EIA(米エネルギー省)が公表した、月次の短期見通しをもとに、世界の石油の需給バランスについて書きます。

OPECプラスは、日量1000万バレルを削減することを4月9日(木)の会合で決定した訳ですが、この大きな規模の減産の決定でも、原油相場は下落しました。

削減幅が十分ではないと市場がみなしていることが、下落の一因と言われています。

EIAによれば、以下の世界の需給バランスのグラフのとおり、4月は日量1500万バレルを超える規模の、供給過剰となると見通されています。

単純計算で、日量1000万バレルの減産では、日量1500万バレルの供給過剰を防ぐことができないわけです。

この点が、日量1000万バレルの削減では不十分、かつさらなる削減が必要、という下落要因につながっているとみられます。

市場はあたかも、OPECプラスが、米国やカナダを巻き込んで合意を主導できるのか、という大きな問いを突き付けているようにも見えます。

4月10日(金)のG20の臨時エネルギー相の会合の行方に注目したいと思います。

図:世界の石油の需給バランス 単位:百万バレル/日量
世界の石油の需給バランス

出所:EIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者推計

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。