原油相場が“世界協調減産合意”でも急騰しない理由②

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。主要株価指数の反落などで。19.62ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドルインデックスの反発などで。1,744.55ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年09月限は10,035元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。20年06月限は274.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで933.05ドル(前日比16.15ドル縮小)、円建てで3,248円(前日比12円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(4月15日 19時6分頃 先限)
 5,890円/g 白金 2,642円/g 原油 24,510円/kl
ゴム 152.5円/kg とうもろこし 22,400円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「原油相場が“世界協調減産合意”でも急騰しない理由②」

今回は「原油相場が“世界協調減産合意”でも急騰しない理由②」として、OPECプラスが協調減産を実施することを決定したのにも関わらず、原油価格が急騰していない、むしろ足元でが20ドルを割り込んでいる点について考えます。

筆者はこの問いの答えについて、以下の4つが挙げられると考えています。

1.市場がOPECプラスの行動を評価・信用していないため。
2.970万バレルの削減でも過剰在庫が積み上がる可能性があるため。
3.現在の原油価格の水準を肯定するバイアスがかかっているため。
4.期待された米国が現実的に減産に協力できないことが分かりつつあるため。

今回は、1.について書きます。以前の「原油相場が“世界協調減産合意”でも急騰しない理由①」で述べた、ロシアの減産順守率の件はこの1に含まれます。

もともと2000万バレルという話があったものの、4月9日の会合で1000万バレルで暫定合意し、そして12日に970万バレルで合意にいたりました。

OPECプラスは本音では減産をしたくないのかもしれません。むしろ増産を行う動機もあります。

単価(原油相場)が下がったため、輸出する“量”を増やさなければならない、つまりOPECプラスは薄利多売をしなければならない状況にあると言えます。

OPECプラスは大胆な減産を行うことができないと市場にみなされ、OPECプラスの決定が市場に評価されていない可能性があります。

また、削減量が、順次縮小されることも評価を低下させる要因になっているとみられます。970万バレルの削減は最初の2カ月のみです。

そして、2020年3月まで行われた協調減産実施時、減産開始直前に産油量を急増させ、引き上がった生産量を基準に減産を行う“駆込み増産”をおこなったことがあだとなり、そもそもOPECプラスの減産を信用できないと市場が考えている可能性があります。

図:NY原油価格の推移 単位:ドル/バレル
NY原油価格の推移

出所:CMEのデータをもとに筆者推計

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。