原油相場が“世界協調減産合意”でも急騰しない理由①

著者:吉田 哲
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原油反落。主要株価指数の反落などで。22.70ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,740.40ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。20年09月限は9,940元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。20年06月限は285.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで991.4ドル(前日比12.8ドル縮小)、円建てで3,286円(前日比23円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(4月13日 18時46分頃 先限)
 5,858円/g 白金 2,572円/g 原油 24,680円/kl
ゴム 149.7円/kg とうもろこし 22,810円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「原油相場が“世界協調減産合意”でも急騰しない理由①」

前回は「日量1000万バレルでは足りない理由」として、先週EIA(米エネルギー省)が公表した月次の短期見通しをもとに、世界の石油の需給バランスについて書きました。

今回は「原油相場が“世界協調減産合意”でも急騰しない理由①」として、4月13日(月)未明に、報じられたOPECプラスの日量970万バレル実施合意の報道後も、原油相場急騰していない理由について、ロシアの減産順守率の面から考えます。

減産順守率は、実際の削減量を削減予定量で除した値で、100%を超えれば減産順守(減産を守っている)状態を示す数値です。以下のグラフはロシアの減産順守率です。

IEA(国際エネルギー機関)が公表した、2019年1月から2020年1月までのデータです。

ロシアは2019年1月の減産ルール変更以降、減産を順守したのは2019年5月から7月までの3カ月のみでした。残りの10カ月は減産を順守していません。

ロシアでは春から夏まで、気温が比較的緩むことから、石油施設のメンテナンス期間にあたり、生産量が減少する傾向があると言われています。

つまり、この期間の減産順守は、自発的な生産削減によるものではなく、メンテナンス起因の自然減による減産順守である可能性は否定できません。

また、このメンテナンス期間とみられる期間以外の期間は、いずれも減産非順守であることから、ロシアの減産順守の温度感は、基本的には低いと言ってよいと思います。

この点を鑑みれば、ロシアが今回の減産合意で請け負った、日量250万バレルの削減は実現するのかどうか、疑問です。

今回述べたロシアが減産を順守するか不透明である点以外にも、今回の世界協調減産において、注意しなければならない点はいくつかありますので、次回以降、述べます。

図:ロシアの減産順守率
ロシアの減産順守率

出所:IEA(国際エネルギー機関)のデータをもとに筆者推計

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。