サウジが来月、ヒーローになるかもしれない件

著者:吉田 哲
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原油反発。主要株価指数の反発などで。31.45ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,772.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年09月限は10,245元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年07月限は267.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで913.2ドル(前日比26ドル縮小)、円建てで3,311円(前日比2円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(5月18日 19時17分頃 先限)
 6,124円/g 白金 2,813円/g 原油 24,570円/kl
ゴム 151.9円/kg とうもろこし 22,430円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「サウジが来月、ヒーローになるかもしれない件」

今月のOPEC月報によれば、2020年4月のサウジの原油生産量は、日量1155万バレルでした。

現在行われている、OPECプラスの原油の減産における、サウジ個別の減産のルールは、少なくとも5月と6月、日量1100万バレルを基準に、日量250万バレル削減する、です。

5月と6月、サウジは日量850万バレルを下回る生産をしなければ、減産を順守することができない、ということです。

以下のグラフのとおり、仮に今月、サウジが日量850万バレルの生産を実現した場合、“サウジ、日量300万バレル削減、減産順守”などという見出しが、メディアで踊る可能性があります。

日量300万バレルという量は、OPEC3位のクウェートの生産量に匹敵するため、この見出しを見て“これはすごい量の削減をしたものだ”“やはり、原油相場を引き上げるために、サウジは本気だ”“コロナ禍で消費が減少している中、モノ余りが起きないように、サウジは世界の石油事情を考えてくれている”など、サウジが、産油国として強く、頼れる存在に見えてくるかもしれません。

しかし、減産の議論にもかかせない“削減前の基準がどこか?”という点に気を付けて考えてみると、サウジがヒーローかどうか、疑問が浮上します。

日量300万バレルを削減する前の水準は、日量1100万バレルという、サウジ史上最大の生産量です。

日量1100万バレルまでの大増産がなくても、日量300万バレルの削減が実現できたのか?と問われれば、答えは、できなかったかもしれない、となると筆者は思います。

基準が歴史的な高水準だからこそ(事前の大増産があったからこそ)、日量300万バレルという、とてつもない量の削減を実現できる可能性があるのだと思います。

日量1100万バレルまでの大増産がなく、かつ、減産を順守した場合の削減量は、日量120万バレル程度です。

来月公表される、サウジの原油生産量に注目です。

図:サウジの原油生産量 単位:千バレル/日量


出所:OPEC(石油輸出国機構)のデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。