[Vol.1972] 原油相場、上下の圧力に挟まれて下げ渋る

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。61.69ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。3,242.66ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。25年09月限は15,005元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。25年07月限は462.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2248.76ドル(前日比51.66ドル拡大)、円建てで10,714円(前日比80円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月19日 17時55分時点 6番限)
15,219円/g
白金 4,505円/g
ゴム 322.8円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,097円/mmBtu(25年7月限 3月21日17時47分時点)

●NY原油先物 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物 日足  単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「原油相場、上下の圧力に挟まれて下げ渋る」
前回は、「新興国発の需給ひっ迫懸念」として、主要穀物(トウモロコシ、大豆、小麦)の人口一人当たりの消費量を確認しました。

今回は、「原油相場、上下の圧力に挟まれて下げ渋る」として、原油相場を取り巻く環境(4月2週目以降)を確認します。

原油相場はしばしば「下がっている」と報じられていますが、長期視点では高止まりしています。なぜ原油相場は下がらないのでしょうか。それを知るには、長期視点で産油国の状況を丁寧に確認する必要があります。

原油の国際的な指標の一つであるWTI原油※先物の、日々の安値の推移を確認します。
※WTI原油:米国の西テキサス地域で産出されるガソリンなどを比較的多く抽出できる原油。West Texas Intermediate。

この数か月、「原油相場は下がった」とする報道が目立っています。たしかにウクライナ戦争が勃発した年(2022年)の高値水準に比べれば、下がっています。2025年4月上旬に発生したトランプ関税ショックが下落に拍車をかけた、との声もあります。たしかにそのとおりです。

しかし、トランプ関税ショックを経ても、60ドルの節目を大きく下回る事なく、原油相場は推移しています。数回、60ドルを割る場面がありましたが、すぐさま、反発しています。

短期的な動きを見ていると、60ドル割れを買いのタイミングと認識している市場関係者がいるように思えます。なぜ、このような動きになっているのでしょうか。なぜ、一部で報じられているとおり、急落していかないのでしょうか。

理由は簡単です。上昇圧力が存在しているからです。以下のとおり、トランプ氏もOPECプラスも、上昇圧力をかけています。下落圧力をかけつつ、上昇圧力もかけているのです。原油相場はこうした圧力に挟まれているため、一方的に下落も上昇もしていないと言えます。

図:原油相場を取り巻く環境(4月2週目以降)
図:原油相場を取り巻く環境(4月2週目以降)
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。