なべ底形成、買い戦略に分があり(コーン相場)

著者:菊川 弘之
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 現段階では、順調な作付け・生育が続いており、豊作期待から昨年同様に大口投機玉は売り越し幅を拡大させている。ここ数年の米国産の大豊作で、投機玉は売り慣れしている感触だ。ただし、昨年は6月に入り、米コーンベルトでの降雨および低温予報を受けて、作付・生育遅れ懸念が強まる中、中東の地政学リスクからの原油高や、メキシコ向けの大口成約などを背景に、大口投機筋のショートカバーを巻き込みながら、急騰した。

 今年は、昨年よりも値位置が低い中、投機玉の売り越し幅は、同水準にまで拡大しており、相関の高い原油相場が切り返しを見せていることを考慮すると、新規は、売りではなく、買い主体の戦略を考えたい。

 秋の収穫の時期までに、何度となく天候が囃される時期は訪れる。米中対立や、新型コロナウイルスの感染2次爆発懸念などはあるものの、内部要因からは安値売込み型となっており、弱材料が出ても下げにくくなっている。

 天候相場の天王山といわれる独立記念日(7月)、米大統領選挙(11月)などに向けて、不確定要因は多い。特に、今年は中東・アフリカ地区で発生したバッタ被害や、新型コロナウイルス拡大に伴うアジア各国での穀物輸出制限の動きなど、国連世界食糧計画(WEP)の試算では、世界で2億6500万人が食糧不足で苦しむと予想されている。

 昔を知らない豊作に慣れた最近の市場参加者が、米国の本格的な天候不順に直面すると、パニック的な巻き戻しが生じてもおかしくはない。現在の値位置、投機玉の偏り、これから天候相場本番を迎えることなどを考慮すると、安値売り込みは避け、買い戦略に分があると考える。
 

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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