コロナが、米国を原油純輸出国にする!?②

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。主要株価指数の反落などで。32.16ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,720.85ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。20年09月限は10,270元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年07月限は273.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで837.75ドル(前日比5.15ドル拡大)、円建てで3,104円(前日比8円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(5月28日 19時20分頃 先限)
 5,986円/g 白金 2,882円/g 原油 24,890円/kl
ゴム 153.5円/kg とうもろこし 22,250円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「コロナが、米国を原油純輸出国にする!?②」

前回は「コロナが、米国を原油純輸出国にする!?」として、5月26日(火)に、米エネルギー省(EIA)が公表した、月次レポートから、米国の原油の輸出量と輸入量について、書きました。

今回は「コロナが、米国を原油純輸出国にする!?②」として、前回の続編を書きます。

前回述べたことの要旨は、以下の通りです。

・2020年4月は、このおよそ46年間で、4番目に、純輸出国に近い状態だった。
・その背景には、新型コロナウイルスの米国での感染拡大を受けた、石油製品の消費減少が挙げられる。
・米国の経済回復が、遅れれば遅れるほど、石油の消費回復が遅れ、原油輸入量がさらに減少する。
・なおかつ、消費減少によるモノ余りを防ぐため、輸出量が増加する。
・そうなれば、数カ月後に、米国は原油輸出国になる可能性がある。

以下のグラフは、米国の原油輸出量から輸入量を引いた、米国のネット原油輸出量です。

値が、プラス(輸出量>輸入量)の場合、米国は原油の純輸出国であることを、マイナス(輸出量<輸入量)の場合、純輸入国であることを示します。

このおよそ46年間、値がプラスになったことがないため、米国はこの間、原油の純輸入国だったことがわかります。

上記のとおり、仮に、数カ月後に、米国が原油の純輸出国になった場合、米国の産油国としての立ち位置が向上する、サウジやロシアとのシェア争いが激化する、などのイメージが強まりそうですが、実際には、そのようなことはありません。

近い将来、予想される米国の純輸出国化は、新型コロナウイルスの感染拡大による、消費減少起因の輸入量の減少と、モノ余り回避のための輸出増加が、同時に発生して起きることが前提であり、生産量の増加が前提ではないためです。

仮に、数カ月後に、米国が原油の純輸出国となったとしても、原油相場の急落が拍車をかけた米シェールの生産減少によって、生産シェアは低下している可能性があります。

図:米国のネット原油輸出量(原油輸出量-輸入量) 単位:千バレル/日量
米国のネット原油輸出量(原油輸出量-輸入量)

出所:米エネルギー省(EIA)のデータより筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。