FOMCを受けた金相場見通し

著者:菊川 弘之
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 今回のFOMCで、追加緩和について具体的に何か語るのか否か、市場は注目していたが、FRB議長の記者会見でも具体的な発表はなかった。大混戦が予想されている米大統領選挙だが、マーケットの一部で懸念されているのが、すんなりと次期大統領が決定しないケース。次期大統領就任日2021年1月20日までに、新大統領が決まらないような事態に陥った場合にFRBが備えているとの見方もある。

 米国における新型コロナウイルス感染拡大一服に伴い米長期金利上昇傾向となっているのがドルの下値支持、NY金の上値抑制要因となっている。一方、オクトーバー・サプライズ(新型コロナウイルスワクチン認可・イラン攻撃・スノーデン恩赦など)も市場の噂に上がっており、大統領選挙の行方が判別するまでは、金の安値を売り込むことも避けられそうだ。FOMCを受けて、大きなサプライズがなかったことで、引き続き、米大統領選挙に向けて、もち合い放れ待ちの展開が続きそうだ。足元で、相関の高まっているユーロやNYダウの値動き次第では、一時的に下振れするリスクは残っているものの、押し目は短期で買い直されると見る。短期的には、米大統領選挙の行方に市場の関心は移行して、金相場は内外共に、もち合い放れ待ちの展開を想定している。

 中長期的には、やはり今回のコロナショックで、世界的な財政出動が余儀なく実施されており、膨れ上がった債務問題が、金にとっては強材料となりそうだ。先進国の債務残高の対GDP比は、第二次世界大戦時を上回る記録的な水準となっている。リーマンショック時にも米財政赤字が急拡大、時間差を経て、NY金価格は史上最高値を更新した。今回は既にリーマンショックを上回る財政赤字で、米議会予算局(CBO)の試算(9/2)では、20年会計年度の財政赤字は、前年度比3倍の3.3兆ドルにまで急増する。(かなり先になりそうだが)基軸通貨として長らく君臨してきたドルの地位が本格的に揺らぐ時、金の輝きはさらに増すこととなりそうだ。

米財政赤字拡大から遅行して金価格上昇

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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