OPECが減産を守らないのはあたり前!?

著者:吉田 哲
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原油反落。主要株価指数の反発などで。39.93ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,952.25ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年01月限は12,360元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年11月限は270.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで997.55ドル(前日比0.55ドル拡大)、円建てで3,390円(前日比14円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月17日 18時47分頃 先限)
6,570円/g 白金 3,180円/g
ゴム 182.2円/kg とうもろこし 23,870円/t

●WTI原油 日足 (単位:ドル/バレル)
WTI原油日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡより

●本日のグラフ「OPECが減産を守らないのはあたり前!?」

前回は「なぜ減らない!?米シェール生産量」として、米国のシェール主要地区の原油生産量が回復しつつあることについて、考えました。

今回は「OPECが減産を守らないのはあたり前!?」として、OPECの原油生産量とOPECが自ら定めた生産量の上限について、考えます。

以下はOPECの原油生産量の推移です。厳密には、生産量を割り当てられた加盟国の原油生産量の合計です。OPEC発足直後から急激に原油生産量が増加しています。

また、赤い点線は、各国に割り当てられた生産量の上限の合計です。

OPEC発足後、加盟国が増加したこと、石油メジャーとの交渉を進め、少しずつ自らの意思で原油の生産を行うことができるようになったことを示しています。

1980年代に入ると、急激に原油生産量が減少します。原油価格が下落したこと、そして世界の石油の需給バランスを安定化させるという、いわば原油供給における“調整弁”の役割を果たすべく、原油生産量を減少させたとみられます。

OPECがこのような動きをすることから、市場は“スイング・プロデューサー”と呼びました。

生産量の調整役であることが、世界に知られたOPECは、1982年4月、統計上初めて、“生産量の割り当て”を導入します。

その時の需要の状況に合わせて生産量を調整することとし、加盟国ごとに生産量の上限を決め、極端な増産を行わないと決めたのです。

基本的には、加盟国ごとに上限があるのですが、時には、加盟国ごとではなくOPEC全体で上限を設定したり、一部生産量の割り当てを行わない例外国を作ったりしました。

現在行われている原油の減産では、イランとリビア、ベネズエラが生産量の割り当てがない、減産免除国です。

1982年に生産割り当てが始まって以降、対象国の原油生産量と割り当てられた生産量の上限を見てみると、ほとんどの月で、生産量の方が多いことがわかります。

筆者の推定では、1982年4月以降、2020年7月まで、生産量の割り当てがなされた440カ月のうち、割り当て量の上限を生産量が下回ったのは、44カ月でした。自ら決めた割当量を順守したのは10%と推定されます。

自ら決めたことを行わないことが、常態化していたわけです。

近年、OPECの市場への影響力が低下しているのではないか、という議論がなされることがありますが、影響力が低下したとみられる最も大きな理由は、自分たちで決めたことを守らないこと、にあると筆者は考えています。

図:OPECの原油生産量の推移と、割り当てられた生産量の上限の合計 単位:千バレル/日量
OPECの生産量(生産量割り当て対象国)
出所:海外メディアおよびOPECのデータより筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。