米国のシェール主要地区の原油生産量が、回復している理由

著者:吉田 哲
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原油反発。主要株価指数の反発などで。40.52ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,875.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年01月限は12,635元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年11月限は266.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1023.25ドル(前日比15.65ドル縮小)、円建てで3,438円(前日比11円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月25日 18時11分頃 先限)
6,354円/g 白金 2,916円/g
ゴム 187.8円/kg とうもろこし 23,910円/t

●WTI原油 日足 (単位:ドル/バレル)
WTI原油日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡより

●本日のグラフ「米国のシェール主要地区の原油生産量が、回復している理由」

前回は「OPECプラス減産順守のニュースは、冷静に判断しなければならない」として、9月21日(月)に公表された8月の減産順守率をもとに、これまでのOPECプラスの減産の順守状況について、考えました。

今回は「米国のシェール主要地区の原油生産量が、回復している理由」として、9月14日(月)にEIA(米エネルギー省)が公表した米シェール主要地区の各種データより、最新の8月分を含んだ、これまでの同地区の新規1油井あたりの原油生産量、および稼働リグ数について、考えます。

2月から3月にかけて発生した、幅広いリスク資産の価格下落、いわゆる“新型コロナショック”の際に、原油価格も急落し、米国のシェール業者は壊滅的な打撃を受けたと報じられました。

原油価格の急落や、米国の原油生産量の急減が報じられる際、“稼働リグ数の急減”が添えられることがあるのは、稼働リグ数の減少が、原油価格が下落することで起き、そしてシェールの開発活動の停滞、後の生産量の減少を強く想起させるためです。

たしかに4月、5月は、米国の原油生産量は急減しました。稼働リグ数も急減しました。

ただ、同日、同省が公表した主要7地区の原油生産量の合計は、日量770万バレルと、前月比、わずかに増加しました。

米国の原油生産量は、稼働リグ数が低迷しているにも関わらず、徐々に回復しているわけです。なぜ、稼働リグ数が低迷していても、米国の原油生産量が回復するのでしょうか?

この問いの答えは、生産面における“質”に注目することで得られると、筆者は考えています。

以下のグラフのとおり、生産効率、つまり“質”の意味を持つ“新規1油井あたりの原油生産量”が、2020年の初頭に急減したものの、その後、急増しています。

一時的に悪化した“質”が、その後、劇的に向上したわけです。原油相場低迷時の、企業努力が要因とみられます。

“油井の数”(質と相対する要素)は、稼働リグ数が減少すれば減少することが見込まれますが、その油井1つあたりからの原油生産量が増加しているため、同地区の原油生産量は減少せず、むしろ回復に向かっていると考えられます。

同地区における“質”(生産効率)の劇的な向上が、米国の原油生産量が回復している最も大きな理由だと、考えられます。

原油価格が目立って上昇していないため、米国の原油生産量は増加しにくいだろう、と考えるのは早合点だと、筆者は考えています。

図:米シェール主要地区の新規1油井あたりの原油生産量と稼働リグ数

米シェール主要地区の新規1油井あたりの原油生産量と稼働リグ数
出所:EIA(米エネルギー省)のデータより筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。