今どきの金相場は、少なくとも5つのテーマで見つめることが必要①

著者:吉田 哲
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原油反発。主要株価指数の反発などで。40.33ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,890.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年01月限は12,625元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年11月限は265.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで999.7ドル(前日比8.8ドル拡大)、円建てで3,414円(前日比10円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月29日 20時0分頃 先限)
6,408円/g 白金 2,994円/g
ゴム 186.5円/kg とうもろこし-円/t

●WTI原油 日足 (単位:ドル/バレル)
WTI原油日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡより

●本日のグラフ「今どきの金相場は、少なくとも5つのテーマで見つめることが必要①」

前回は「減産延命を勧告した、JMMC」として、9月17日(木)に開催されたJMMC(共同閣僚監視委員会)の内容について書きました。

今回は金(ゴールド)について、「今どきの金相場は、少なくとも5つのテーマで見つめることが必要①」として、先週発生した金相場の急落の背景について考えます。

先週、金(NY金先物)は4.9%下落しました。また、ドル指数や対主要国通貨でドルが上昇、コロナ禍で脚光を浴びる米国のハイテク株が中心のナスダックを除き、日米中欧の主要株価指数の多くが下落しました。おおむね先週は“ドル高・株安・金安”だったと言えます。

S&P500、日経225、NYダウ上海総合、ユーロ・ストック50などの欧米とアジアの主要株価指数が下落したにもかかわらず、つまり、株安起因の“代替資産”としての需要増加観測という上昇要因があったにもかかわらず、金相場は下落したわけです。

また、世界全体の新型コロナウイルス感染拡大がとまる気配がなく(特に欧州での感染拡大が目立っている)、不安・懸念(広く言えば“有事のムード”)が強まり、資金の逃避先としての需要増加観測という上昇要因があったにもかかわらず、金相場は下落したわけです。

“代替資産”、“有事のムード”の2つの側面から上昇圧力を受け得る状態だったにもかかわらず、金相場が下落したのはなぜなのでしょうか?この問いの答えは“金相場は一つの材料で動いていない”という考え方を用いることで、導くことができると、筆者は考えています。

金市場には、“有事のムード”、“代替資産”、“代替通貨”、“中国インドの宝飾需要”、“中央銀行”の、少なくとも5つのテーマが存在すると考えています。新型コロナショック時の下落、2020年8月上旬の下落、そして今回の9月下旬の下落を、上述した5テーマの影響度を比較してみると以下のとおりとなります。


図の右の「9月下旬の下落時」で示したとおり、短・中期的な金価格の上昇要因になり得る“有事のムード”と“代替資産(この場合、株の代わり)”の2つのテーマは、価格を上昇させる方向に向いていたと考えられます。世界、とりわけ欧州で新型コロナの感染拡大が目立ったことで不安・懸念が拡大し、同時に、ハイテク株を除く主要国の株価指数が下落したためです。

このような状況の中、金価格が下落したのは、“代替通貨”で、強い下落要因が生じたためだと、考えられます。次回以降、この“代替通貨”における強い下落要因について、書きます。

図:金相場を取り巻く5つのテーマと価格下落時のイメージ
金相場を取り巻く5つのテーマと価格下落時のイメージ

出所:筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。