プラチナ市場にある“正したい勘違い”③

著者:吉田 哲
原油反落。米主要株価指数の反発などで。40.81ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反発などで。1,922.35ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年01月限は13,205元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。20年12月限は271.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1034.5ドル(前日比3.4ドル拡大)、円建てで3,556円(前日比16円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月13日 20時3分頃 先限)
6,524円/g 白金 2,968円/g
ゴム 201.0円/kg とうもろこし 23,890円/t

●NYプラチナ先物 月足 (単位:ドル/トロイオンス)
NYプラチナ先物月足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「プラチナ市場にある“正したい勘違い”③」

前回は「プラチナ市場にある“正したい勘違い”②」として、プラチナの需給に関するデータより、欧州における排ガス浄化装置向けの貴金属の消費量の動向に、注目しました。

今回は前回に続き「プラチナ市場にある“正したい勘違い”③」として、前回に関連し、フォルクスワーゲン問題発覚後の、プラチナ価格の推移に注目します。

足元、NYプラチナ先物価格は、1トロイオンスあたりおよそ870ドルです。これは、リーマンショック直後の安値水準です。

前回述べた通り、ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン社が違法な装置を使い、排ガス検査を不正にくぐり抜けてきたことが発覚した、いわゆるフォルクスワーゲン問題(2015年)が、欧州のディーゼル車の信用を失墜させ、欧州のディーゼル車の生産台数を減少させた、という話をしばしば、耳にします。

これにより、欧州のディーゼル車の生産台数が減り、プラチナの消費が大きく減少する懸念が浮上したわけですが、価格はその問題発覚以降も、急落することなく、リーマンショック直後の安値水準を割れることなく、おおむね維持しています。

問題発覚直後の2015年や2016年のプラチナ価格は、今とほぼ同じ870ドル近辺です。米中貿易戦争が激化し、世界景気が悪化する懸念が生じた2018年の安値は780ドル近辺まで下落しましたが、それでもリーマンショック直後の安値水準を大きく下回ることはありませんでした。

また、世界中の多くのリスク資産が売られた“新型コロナショック”の際、プラチナも他の資産と同様、下落しました。一時700ドル前後まで下落しましたが、それでも、すぐに反発し、短時間でもとのリーマンショック直後の安値水準まで戻りました。

つまり、リーマンショック後、同ショック直後につけた安値水準は、長期的なサポートラインとして、フォルクスワーゲン問題発覚後も、新型コロナショックの時も、機能していたわけです。なぜ、このような事象が起きているのでしょうか。

プラチナに限ったことではなく、コモディティ市場全体に言えることですが、コモディティ市場は2000年代前半に大きな変革を迎えた、と考えられます。

先進国で大規模な金融緩和が行われたことで、あふれたマネーが増加し、ETFなどが組成されてコモディティの金融商品化が加速し、デジタル端末の発展やインフラの急速な普及によって情報化社会が進展しました。このような社会の大きな変化は、コモディティ市場を、株式や通貨、金利などさまざまな市場との結びつきを強くした、と考えられます。そして、コモディティ市場は、他の市場との標準化が進み、独自性が低下したと考えられます。

このような大きな変化が、各種コモディティ市場の値動きに変化をもたらし、その結果、プラチナ市場では、長期的な安値水準が引き上がる変化が生じたと考えられます。

プラチナのように、現在もリーマンショック後の安値水準が長期的な価格のサポートラインとなっている銘柄は大豆とコーヒーです。また原油、小麦、トウモロコシもそれに似た状況になっています。

図:NYプラチナ先物(期近)月足 終値 ドル/トロイオンス
NYプラチナ先物(期近)月足

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。