プラチナ市場にある“正したい勘違い”②

著者:吉田 哲
原油反発。米主要株価指数の反発などで。40.81ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,922.35ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年01月限は13,175元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。20年11月限は261.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1034.5ドル(前日比3.4ドル拡大)、円建てで3,546円(前日比14円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月12日 12時49分頃 先限)
6,550円/g 白金 3,004円/g
ゴム 198.8円/kg とうもろこし 24,020円/t

●大阪プラチナ先物 日足 (単位:円/グラム)
大阪プラチナ先物日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「プラチナ市場にある“正したい勘違い”②」

前回は「プラチナ市場にある“正したい勘違い”①」として、先月、WPIC(World Platinum Investment Council)が公表したプラチナの需給に関するデータより、プラチナの鉱山生産量、および産業用と宝飾用を足した消費量の動向に、注目しました。

今回は前回に続き「プラチナ市場にある“正したい勘違い”②」として、プラチナの需給に関するデータより、欧州における排ガス浄化装置向けの貴金属の消費量の動向に、注目します。

プラチナ相場の今後を考える上で、自動車の排ガス浄化装置の消費動向は、欠かせないテーマです。ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン社が違法な装置を使い、排ガス検査を不正にくぐり抜けてきたことが発覚した、いわゆるフォルクスワーゲン問題(2015年)が、欧州のディーゼル車の信用を失墜させたため、欧州のディーゼル車の生産台数を減少させる、という話をしばしば、耳にします。

たしかに、そのとおりで、欧州のディーゼル車の生産台数は同問題発覚後、減少しました。ただし、欧州で使用されている自動車排ガス浄化装置向けのプラチナの量は、自動車の生産台数ほどは、減少していません。

以下のグラフは、欧州における排ガス浄化装置向けの貴金属の消費量を示しています。プラチナは、2019年、38.4トンと見込まれており、同問題発覚直前の2014年の40.7トンから5.7%程度少ないものの、2013年よりも多い量です。

また、欧州で生産された自動車(自家用車、商用車、トラックなどを含む四輪車)の台数と、欧州で消費された貴金属(プラチナ、パラジウム、ロジウム)の数量の合計から推計した、欧州における、自動車1台あたりの排ガス浄化装置向けの貴金属消費量は、年々増加しています。

近年は、欧州で生産される乗用車と商用車の割合は大きく変動していないことから、大型車が多く生産され、その分だけ1台あたりの貴金属消費量が増加していることは、ないとみられます。

1台あたりに排ガス浄化装置向けとして使用される貴金属の量が増加しているとみられることについて、その背景には、今後も強化されることが想定され、世界屈指の厳しさと言われる、同地域の排ガス規制が挙げられると、筆者は考えています。

厳しくなる一方の排ガス規制をクリアし続けるためには、燃焼効率が良いエンジンを開発する技術の他、大気中に排出される有害物質をできるだけ少なくする技術が必要です。排ガス浄化装置の性能を向上させるため、1台あたりに使われる貴金属の量が増加していると、考えられます。

フォルクスワーゲン問題が発覚し、プラチナの消費量が大きく減少すると、思い込んだ人も多かったと思いますが、実際にはそれほどでもなかったことをデータが示しています。この点が、正したい勘違いの2点目です。

図:欧州における排ガス浄化装置向けの貴金属の消費量 単位:トン
欧州における排ガス浄化装置向けの貴金属の消費量

出所:トムソンロイターGFMSのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。