プラチナ市場にある“正したい勘違い”④

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。40.23ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,899.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年01月限は13,360元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。20年12月限は269.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1025.35ドル(前日比4.05ドル拡大)、円建てで3,480円(前日比10円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月14日 18時40分頃 先限)
6,448円/g 白金 2,968円/g
ゴム 202.2円/kg とうもろこし 23,820円/t

●NYプラチナ先物 月足 (単位:ドル/トロイオンス)
NYプラチナ先物月足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「プラチナ市場にある“正したい勘違い”④」

前回は「プラチナ市場にある“正したい勘違い”③」として、前回に関連し、フォルクスワーゲン問題発覚後の、プラチナ価格の推移に注目しました。

今回は前回に続き「プラチナ市場にある“正したい勘違い”④」として、プラチナと金価格、およびそれらの価格差の推移に注目します。

筆者は近年、プラチナのレポートを書く際、金とプラチナの価格差について、積極的に触れてきませんでした。“割安”というキーワードがミスリードを引き起こすきっかけとなることを懸念しているためです。

こうした中、金は8月、史上最高値近辺まで上昇しました。一方、プラチナはリーマン・ショック直後の安値水準のままです。その結果、価格差(プラチナ価格-金価格)のマイナス幅は、拡大傾向にあります。

しばしば、価格差が過去にないほど拡大しているから“プラチナは割安だ”、という話を耳にします。価格差拡大がプラチナの割安感を強めているという話です。

この点について申し上げたいのは、価格差は2つの銘柄の関係を数値化したものであり、片方の1つの価格の割高・割安を示す指標ではない、ということです。

また、金よりもプラチナが安いことは考えにくい、という話も耳にします。この点についても、このおよそ5年間、価格差は拡大の一途をたどっていることから考えれば、“考えにくいこと”が、“考えにくく”なっていると、言えます。

さらに言えば、価格差が拡大していることについて、“金がプラチナよりも割高だ”、とする説明をなかなか聞かないのは、なぜなのでしょうか?

なぜ、価格差拡大の議論が、“プラチナが割安”だ、という話に終始する傾向があるのでしょうか?

価格差は、先述のとおり、2つの銘柄の関係を数値化したものです。どちらかが一方的に安い(高い)ことを強調するために用いることができる数値ではありません。

金はプラチナよりも安いものだ、これだけ拡大していることはあり得ない、という考え方をもとに売買することは、以前はできたかもしれませんが、現代の環境においては、なかなか難しいと思います。

この点が、正したい勘違いの3点目です。

図:金とプラチナの価格および、両銘柄の価格差(プラチナ-金)の推移 単位:ドル/トロイオンス
金とプラチナの価格および、両銘柄の価格差(プラチナ-金)の推移

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。