米大統領選挙と金相場

著者:菊川 弘之
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 株式市場が堅調なのは、大統領選挙・議会共に民主党が取る「トリプル・ブルー」で、巨額なインフラ投資期待が材料視されているとの見方もあるが、トランプ大統領当選を予測しての株高との声も一方で存在する。

 仮に、バイデン候補が当選しても巨額投資は米債務拡大につながる。過去の米財政赤字拡大局面と金相場との関係を見ると、財政赤字拡大にタイムラグを置いて金価格が上昇している。

 中国・広東省深セン市で12日、市民5万人が参加する「デジタル人民元」の大規模な実証実験が始まった。中国人民銀行(中銀)は2014年にデジタル元の研究に着手。既に同市や江蘇省蘇州市などで限定的な実験を行っているが、今回は対象を初めて一般市民にまで拡大した。22年の北京冬季五輪を視野に導入を目指しているとされる。

 国際通貨基金(IMF)予測では、先進国に先立って新型コロナ感染を封じ込めた中国は、2021年に8%成長に戻る見込みだ。国慶節(建国記念日)を祝う大型連休中の免税品購入客は前年同期比44%増。同時期の国内旅行者数は6億人強と前年の8割に回復。経済は4~6月期に3.2%成長と復調し、7~9月期の予測は5%強。4~6月期の実質国内総生産(GDP)はドル換算で3.3兆ドル(約350兆円)となり、年率換算で30%超のマイナスだった米国(4.3兆ドル)との差を23%に縮めた。

 3期目はないトランプ大統領・高齢のバイデン候補のいずれが大統領になっても、次の4年間はレイムダッグとなる可能性が高い中、「デジタル人民元」の取り組みが成功するなら、基軸通貨としての「ドル」体制が揺るぎかねない。これはドルと逆相関の金相場にとっては、将来的な米財政赤字拡大・債務問題と合わせて、金の値位置を大きく変える強気要因となりかねないと考える。

IMF世界経済見通し(2020)
 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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