週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比0.60ドル安の40.44ドル、ブレント原油は同0.56ドル安の42.61ドルとなった。

 前週末の海外原油は、ハリケーン「デルタ」が米メキシコ湾岸に上陸したものの、生産への影響は一時的との見方から軟調な推移となる。また、ノルウェーのストライキが終結し、生産が回復する見通しとなったことも弱材料だったが、株高及びドル安がある程度下支えした模様。

 先週に入ると、リビア最大油田のシャララ油田にて不可抗力条項が解除され生産が再開する見通しであることから、供給増加が懸念され続落となる。OPECに加盟しているリビアには生産量に上限はなく(生産枠が課されていない)、全体の生産量は日量35万5000バレルまで増加する見通しとなっている。翌日は、中国の貿易統計において原油輸入が前年比で増加していたことや、OPECの月報にて2020年の需要見通しが上方修正されたことが好感され堅調に推移。ただし、新型コロナウィルスのワクチン開発が一時中断したとの報や、米追加経済対策の協議停滞が嫌気され、上値は抑えられる格好となった。水曜日には、EIA統計にて原油在庫の減少が予想されていることや、サウジとロシアの首脳が協調減産を継続する必要性について電話会談したと伝わったことが好感され続伸となった。15日は、欧州を中心にコロナが再流行している中で、再び移動制限措置が行われていることが嫌気され反落。ただし、株式相場が安値から買い戻されたことや、石油在庫の減少が示されたことが好感され安値からは下げ幅を縮小して引けることとなった。
 
原油チャート
 
 海外原油は、直近高値こそ上抜けれないものの、先週初めにかけてハリケーン及びストライキプレミアムが剥がれるかたちで下落した後、再び値を戻す展開。とは言うものの、テクニカル面ではWTIを見ると直近で2度ほど41ドル台後半から42ドル水準で戻りを売られて跳ね返されており、今週はそこを抜けきれるか、あるいは抜けきれずにトリプルトップの形となるのかが、目先の注目点となる。ファンダメンタル面から考えると、OPECプラスが来年以降も現行の減産幅を維持するのではとの期待感は支えとなっているものの、前述のように外出制限等が再び導入されたことで石油需要への懸念が上値を抑える格好となっており強弱材料がまちまち、株式の上昇やサウジによる口先介入等があれば買われる場面も想定されるが、現状の値位置でのレンジ相場の継続となりそうか。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。