米シェール業者、ここからが本当の勝負!?

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。41.23ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,908.55ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年01月限は14,690元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。20年12月限は270.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1048.1ドル(前日比0.1ドル縮小)、円建てで3,555円(前日比5円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月20日 20時6分頃 先限)
6,477円/g 白金 2,922円/g
ゴム 212.2円/kg とうもろこし 24,620円/t

●シカゴ小麦先物 日足 (単位:ドル/ブッシェル)
シカゴ小麦先物日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「米シェール業者、ここからが本当の勝負!?」

前回は「先週(10月9日~16日)は、小麦とビットコイン、イーサリアムの上昇が目立った」として、先週の、主要株価指数、通貨、商品(コモディティ)、暗号資産の4つのジャンルにおける合計25銘柄の騰落率を、ランキング形式で確認しました。

今回は「米シェール業者、ここからが本当の勝負!?」として、先週、EIA(米エネルギー省)が公表した、米シェール主要地区の各種データから、掘削済井戸数と仕上げ済井戸数について書きます。

同地区のシェール開発工程は、大きく3つに分かれていると言われています。①探索→②開発→③生産です。①探索をして、掘削をする場所を決め、リグで掘削(②開発の前工程)をし、その坑井に対して、水と砂と少量の化学物質を高圧で注入し、原油生産を行うことができるようにする最終的な作業である仕上げ(②開発の後工程)をすることで、坑井が油井となり、③生産がはじまります。

シェール3つの工程の中で、最も時間とお金と労力がかかるのは、②の開発です。シェール業者が②にどれだけのリソース(時間とお金と労力)を注いで掘削や仕上げをするのかが、同地区の原油生産量を左右する重要な要素と言えます。

その掘削と仕上げがどれだけ行われたのかを知ることができるデータがあります。“掘削済井戸数”と“仕上げ済井戸数”です。EIAの月次統計で確認することができます。先週公表されたデータでは、9月の掘削済井戸数は295基、仕上げ済井戸数は372基でした。

このデータは2014年1月からはじまっていますが、2020年9月のデータは統計開始以来、最低水準です。つまり、9月は、掘削も仕上げも、活発に行われなかった、と言えます。

以前の「米シェール業者、さらに筋肉質になる」で、新規1油井あたりの原油生産量が急増していると書きましたが、それはあくまでも、1単位あたりの“質”の話であり、“数”の話ではありません。

“質”と“数”の両方がかけあわされて生産量が決まるわけですが、足元、掘削も仕上げも活発に行われていないことを考えれば、これが“数”の圧倒的不足の原因になり、同地区の原油生産量は今後、減少する可能性があります。

原油生産量が回復するシナリオを強いて考えれば、細々と(?)行われている掘削と仕上げが、効率よく生産できそうな質の高い坑井だけで行われていた場合は、同地区の原油生産量が回復したり、減少するタイミングが先延ばしになったりするかもしれません。ただ、そのようなある意味“延命”も、長くは続かないかもしれません。

現在は、シェール業者たちにとって、原油相場が低水準でも生き残ることができるよう、無駄な投資をせず、より筋肉質になるための過渡期にあると考えられます。仮に、今の掘削済井戸数、仕上げ済井戸数の水準でも、原油生産量を増やすことができるようになるためには、新規1油井あたりの原油生産量は今よりもさらに、高水準であることが必要でしょう。

原油相場が40ドルを挟んだ小動きに終始している中、どこまで効率化をすすめ(新規1油井あたりの原油生産量を増やし)、原油生産量の減少を食い止めることができるか、ここからが米シェール業者の本当の勝負なのかもしれません。

図:米シェール主要地区の掘削済井戸数と仕上げ済井戸数および原油価格
米シェール主要地区の掘削済井戸数と仕上げ済井戸数および原油価格

出所:EIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。