“7割経済”というモノサシで、コロナショック後の石油需給を見る

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。45.20ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,808.35ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年01月限は14,735元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年01月限は289.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで845.85ドル(前日比0.45ドル縮小)、円建てで2,873円(前日比15円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月25日 18時30分頃 先限)
6,089円/g 白金 3,216円/g
ゴム 239.2円/kg とうもろこし 24,890円/t

●WTI原油先物 日足 (単位:ドル/バレル)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「“7割経済”というモノサシで、コロナショック後の石油需給を見る」

前回は「まだ高い、原油相場の材料を俯瞰する」として、9月上旬以来の高値に達したWTI原油先物に代表される、国内外の原油相場の変動要因を俯瞰しました。

今回は「“7割経済”というモノサシで、コロナショック後の石油需給を見る」として、新型コロナ感染拡大直前の2019年12月から、2020年10月までの、世界の石油供給量および消費量について、書きます。

“7割経済”という言葉があります。おおむね、大規模な危機が訪れた時、危機後の経済活動やそれによる成果が、危機前の7割程度に落ち込む、という意味です。特に今年春以降、新型コロナの感染拡大の影響を推測する記事などで、目立つようになった言葉です。

この“7割経済”を、世界の石油の供給量と消費量に当てはめてみます。以下のグラフのとおり、危機前を2019年12月とし、危機後(実際にはまだ危機の最中ですが)を足元の2020年10月とします。

この2点間の減少率は、供給量が9.6%、消費量が7.1%です。“7割経済”では30%減少を想定しているため、世界の石油の供給量も消費量も、“7割経済”程の減少には、なっていないことがわかります。さしずめ、“9割強経済”といったところです。

では、視点を変えて、新型コロナの影響で減少した供給・消費が、感染拡大後に最も減少した最悪期からどれだけ回復したのか、それが“7割”に達したか、に着目します。最悪期は、供給が2020年5月、消費が同年4月です。

最悪期の減少量は、供給が日量1310万バレル、消費が2160万バレルです。最悪期からの回復量は、供給が日量330万バレル、消費が日量1430万バレルです。これらから計算できる回復率は、供給が25.3%、消費が66.3%です。最悪期から、消費は“7割”回復しつつあるが、供給は“2割5分”しか回復していない、と言えます。

最悪期の値が、供給よりも消費の方が小さいため、回復率は、消費の方が高くなりやすいものの、それでも、10月時点の値が消費の方が大きいことを考えれば、やはり、回復は消費の方が強い、と言えます。

2019年12月の原油相場は、WTIベースで55ドル近辺でした。原油相場はその後、急落・回復を経て今にいたりますが(足元45ドル程度)、この間に受けたマイナスの影響は、回復が鈍さを考えれば、消費よりも供給の方が大きかった、と言えそうです。供給において、消費のような規模の回復を実現するには、原油価格のさらなる反発が必要、と言えそうです。

図:世界の石油供給量と消費量 単位:百万バレル/日量


出所:EIA(米エネルギー省)のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。