200日移動平均線割れ後の金相場見通し

著者:菊川 弘之
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 ただし、今年3月には200日移動平均線割れが、結果として買い場となった。2019年に長らく抵抗だった1400ドル水準を上抜けて以降、200日移動平均線が下値支持として機能している。長期上昇トレンドに変化は出ないと見るなら、値頃ではなく、長い下ヒゲや長大陽線などのチャート上の底打ちパターンを確認してから買い主体の戦術を考えたい。

 2005年以降、月足で大きな天井打ちの節目となったケースでの修正日柄を振り返ると、3ヶ月、8~9ヶ月以内で底打ち反騰となっている。今回の場合、これらの日柄を当てはめると、来春3-4月までには底打ち確認となる計算だ。

 過去の大統領選挙年12月は、新政権期待からNY株式市場は堅調推移、NY金は軟調と言うのがアノマリーだ。世界的な過剰流動性相場の中、ご祝儀での株式市場の宴相場がしばらく続きそうだが、コロナ禍で財政・金融政策の総動員に伴う「法定通貨信任の揺らぎ」と言う大きな流れに変化がない中で、年末年始に示現する金の安値は、中長期的な買い場を提供するものと考える。1月は金にとっては、非常に強い時間帯でもある。

 バイデン次期大統領が誕生した場合、金鉱山が温室効果ガスの排出量削減に伴い、生産量を減らさざるを得ないとの見方も浮上している。温室効果ガスの排出に関しては、一般的に石炭や鉄鉱石生産会社が名指しされるが、鉱業セクターにおいては、金生産会社の排出量も最も多い部類に入る。大型運搬トラックや電力供給は、温室効果ガスの主な排出源だが、金鉱石の品質低下により、鉱山各社は、エネルギーを大量消費するやり方で、さらに鉱山を深く採掘せざるを得ない状況になっている。

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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